星のきらめく天空の欠片

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学校からの帰り道、ゆきと歩いていると公園にほど近い、川に差し掛かったところで、突風が吹き、不思議な感覚に陥った。
辺りの気配を探ると川に流れる人影が見えた。ゆきも気づいたようで、俺はブレザーを脱いでから荷物を任せ、川に飛び込んだ。ここの川は穏やかとはいえ、大人でも深い。丁度流れてきたところで捕まえると、まだ幼い少年だった。
どれぐらい流されていたのか、体は冷え切っている。意識はなく、かすかに呼吸が確認できた。引き上げると服が濡れているのにとても軽かった。さくらよりも一回りは小さく、痩せこけていた。抱き上げると寒いのか無意識にすり寄ってきた。駆け寄ってくるゆきを伴い、ひとまず家に連れ帰った。救急車を呼ぼうか一瞬迷ったが、なぜかそんな気にはなれなかった。
帰宅するとすでに父さんもさくらも帰っていた。びしょぬれで帰ってきたことを驚いていたが、拾ってきた子どもを見ると急いでタオルを持ってきてくれた。川に入って冷え切っていたこともあり、意識がいまだにない少年も風呂に入れた。
そのとき見てしまった。
服の下に無数に刻まれた痕。骨の浮いた肢体。思わず顔をしかめた。
脱衣所に入ってきた父さんに洗い終わった子どもを預ける。驚き一瞬痛ましそうに子どもを見たが、タオルで優しく包んで抱き上げた。
「桃矢くんもゆっくり温まってきてください。この子は僕が寝かしておきますから」
「ああ。ありがとう、父さん。…それでそいつ、たぶんうちで面倒見ることになると思う」
「わかりました」
藤隆は早々に脱衣所を出て行く。
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