星のきらめく天空の欠片
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今日は珍しくさくらが寝坊せずに起きてきた。
なんだかすごく楽しそう。
どうしたのか聞いたら今日の体育はプール開きらしい。
そう。
ぼくがここに来てから3カ月半、季節は夏をむかえていた。
プールか・・・。
梅雨に入りじめじめとした日々がようやくあけたと思ったら、今度は太陽がじりじりと迫ってくるような暑さがつづいてる。
ぼくは少し神経が鈍いみたいであまり暑いとは感じない。
けど体は汗をかいてるし、椅子に深く腰掛けると体はくてーとなるから体は正常に機能しているみたいだ。
きっと気持ちいいだろうな。
だけど、ぼくは入れない。入ってはいけない。
制服の衣替えがあってからみんなが半袖で登校するなか、ぼくひとりその下に黒の長袖を着ている。
まわりには肌が弱いと言ってある。
それも本当だ。ぼくは日焼けしても赤くしかならない。
陽に当たりすぎると、あとで熱が出る。
だけどその程度だったら日焼け止めを塗れば事足りる。
ぼくが長袖を手放せないのはここに来る前に出来た痕が残っているから。
ぼくのからだはきたない。
見られてもぼくはなんともないけど、まわりは見ていて気分がいいわけない。
先生にはプールに入れないことは言ってあるから問題ない。
それにぼく泳げないし。プールじゃ浮けないし。
プールの授業。
ぼくは体操服の上に薄手の白いパーカーを羽織っている。
先生が用意してくれたパラソルの下でぼくはみんなの泳いでる姿を見ている。
ときどき目のあった子たちが手をふってくれる。
それにぼくは手を振り返したりしている。
寺田先生も見回りながら何回かぼくの様子を見に来てくれる。水分補給も忘れない。
ぼくは空を見上げる。
高い、高い空。
遠くには大きな入道雲が浮かんでいる。
水面をみる。
揺れる水面は空からの光を反射させてきらきらとひかる。
水はきらいじゃない。
だけど。
ぼくが―――のは、こんな夏の、暑い日だった。
ぼーっと、ただ皆の起こす波の動きをみていると。
ちゃぽ、
ちゃぽ、
ちゃぽっ、
・・・ん?
今、波の動きが不自然ではなかったか?
ぼくはゆらゆらと揺れる波の音と動きに意識を傾ける。
すると、また、
ちゃぽっ
なにか、そこにいる?
「だれか、いるの?」
ちゃぽっ、
「きみは、どうしてここにいるの?」
ちゃぷ、
・・・・・・。
もしかして、
きみは、
「そうなの?」
ちゃぽんっ
あ。
ぼくの前からいなくなったと思ったら反対側のプールサイドでみんなのざわめきがした。