星のきらめく天空の欠片

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カラン。

テーブルに置いたコップが涼しげな音をたてる。

夏休みに入った。
プールでの一件が終わり、平穏な日常に戻った。
あれ以来カードは現れていない。
カードが現れなくても日々は流れていくわけで、学校が休みでもすることはある。藤隆さんは朝から大学に出勤、桃矢はバイト、さくらは今日も部活動に励んでいる。
ぼくはというと、終業式の翌日から家の中中心の生活を送っていた。
俗に言うひきこもりである。
べつに家から出たくないわけではないが、とくに用事もないぼくは夏休みが始まる直前に渡されていた課題もほとんど消化してしまい、毎日趣味の読書に明け暮れている。
大学の講師をしている藤隆さんの蔵書量は多い。
図書館まで足を運ばなくてもここにはたくさんの本があるから自ずと家から出ることが減った。
でも本を読んでるだけというのも申し訳ないから、それ以外はぼくにもできる家事の手伝いや掃除をしている。ひまだからね。

それから。

「本、ばっか、読んどるみたいやけどっ、宿題は、え、え、ん、か!?」

ピコピコ。
ドドドドッ。

ぼくと同じく家でお留守番をしているけろちゃん。
「オリャーッ!!」とか気合の入った声を出しながら、隣りで忙しなくボタンを連打している。
けろちゃんも大体さくらの部屋で過ごしてるけど、たまに部屋から出てきてはおやつを取りに来たりぼくとお話したりする。
今日はリビングで本を読むぼくの傍ら、テレビゲームに勤しんでいる。

「ん。あと、絵日記だけ」

長いように思えた夏休みも、もう残すところ1週間である。

「あやめは優秀やなぁ」

体が縮んでも頭の中は中学生のままですから。
人知れずつっこむぼくの耳に、「夏休みになってからさくらが宿題してるとこほとんど見たことあらへんけど、ちゃんと間に合うんかなぁ」とロード画面中にお菓子を頬張りながらつぶやくけろちゃん。

・・・さくらは最終日にがんばるタイプ?

けろちゃんとお話をしつつ、読みかけの本を開く。



「――ただいま、あやめくん」
「!?・・・え、あ、おかえりなさい」

びっくりした。もう藤隆さんの帰ってくる時間になっていたらしい。
そばでテレビゲームをしてたはずのけろちゃんは、いつのまにかゲームを片して2階に戻っている。

「今日も本を読んでたのかな?」
「ん」

ぐきゅー。

・・・・?

藤隆さんと話してるとお腹が鳴った。
久しく聞いてなかった音に軽い困惑をおぼえる。

ぽん。
上を見上げると藤隆さんがぼくの頭を撫でている。
桃矢とはまた違う、大きくて優しい手。この手もぼくはすきだ。
なんだかうれしくなるんだ。

「・・・すぐお夕飯の支度しますね」

こくりと頷くと藤隆さんは2階に上がっていった。
もうすぐさくらも帰ってくるだろうと、お風呂にお湯を張る。

ちょうどそこにさくらが帰ってきた。
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