反逆の仮面

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また、落ちる。

はじまりの場所は草木が生い茂る森。
今度はどんな場所に落ちたのだろう。周りを見渡し植物を見る。ここは蓬莱……否、日本か。
戻ってきたのだろうか?しかし、蝕ではなかった。そもそも自分は一度も蝕に遭遇したことはない。
服装はいつもの袴。先新が登極してからも日本の着物と袴を着て過ごすことが多く、飛ばされる前にもそうだった。だが、この模様は飛ばされる前と異なる。
そう。また弾かれてしまったのだ。世界に。
また大事なものを置いてきてしまった。
でも今までで一番長く時を共に出来た。それが一番うれしい。それで、いい。寂しいが、自分の意思ではどうにもならない。この不可解な魂ですらわからないのに。
ここは静かだ。しばらくはここで気持ちを整理しよう。


ここに居着いてから2週間。現状について、いまだに把握しきれていない。わかっていることはいまだに半獣であるということ・・・というか妖のままであること。
ちなみに現在は仔虎(のような猫)で伏せりながら森林浴中。十二国では何故か変えられなかったが、今は最初にいた世界でのように大きさを変えられる。
そしてどうやら仙籍に入ったままのようだ。滅多な怪我ではまず死なない。
そして今日はじめて人に遭遇した。
あれからあの場所を少し離れ気の向くままに野へ下った。そうすると人のにおいがした。赤いものが見えた。鳥居だった。神社らしい。枢木神社とあった。聞いたことがないが、やはりここは日本らしい。そこに小さめの土蔵があった。
しばらく見ていると中から男の子が出てきた。黒髪の少年。ここを遊び場にしていたのだろうか。しばらく見ていると少年はこちらにきた。自分の存在に気づいたわけではなく、単にこちらに用があるのだろう。しかし自分のいた方には特に何もなかったが。
遠目からでも色白に見えた肌。近づくに連れてその少年が日本人ではないことに気がつく。
英国貴族の女性はブルーブラッドと呼ばれることがある。それはあまりの透明な白い肌にその身に流れているのは赤い色ではないのではと思われたことが由来する。
人のことは言えないが、今の自分の器は十二国におとされる前に生を授ったのが日本人の血がほとんど含まれていない人種だったためか、彼とさほど変わらない。
まあ、最初の生から容姿は髪の色や長さくらいしか変わらないから、もはや人種の問題ではないと言える。そして。
「――誰だ?」
振り向いた瞬間、奪われた。
とても美しい容姿のなか、苛烈に光るアメジストはわたしを支配した。
そう。これは、支配だ。
逆らえない。
これは、王だ。
先新とは違う、孤高の王。
彼はあらゆるものを、人を、世界を巻き込む運気をもっている。
危うい。こういう人間は何度か見ているが、その中でも特にこの少年はそれが強い。
目的のために走っている時はなにがなんでも生に縋りつくが、目的を達成したらあっさり死んでしまう、残される側の気持ちを汲まないタイプだ。
それでは幸せにはなれない。一緒にいてこその幸福なのに。
わたしは決めた。この少年と一緒にいようと。
どんな道を選んでも傍にいよう。


とりあえずはお近づきのご挨拶。
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