彩纏う

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紅州に来た。
紅州ではいま、蜜柑の収穫期らしい。龍蓮が食べに行こうというので来てみた。
紅州は彩雲国の南東の方角に位置し、比較的温暖な地方だ。これから冬に向かう季節だというのに、少し涼しいと感じるぐらいで寒くはない。

そういえば。

「龍蓮、ここは紅家の管理する土地だろう。藍家の人間が容易に出入りしてもいい場所なのか?」
彩七家の中で、藍と紅は特に権力を有する名門貴族だと聞いた。そして、お互い意識し合ってる間柄のはず。他の州ならともかく、そんな紅家の管轄下を藍家の、それも直系が堂々とほっつき歩いていていいのだろうか。
「問題ない。わたしたちは蜜柑を食べにきたのだから」
「それはそうなんだが・・・」
なら、
さっきからすれちがう人たちが、こちらを見てぎょっとした顔をするのはなぜだ。
小さい子供二人づれだからだろうか?
「ここには2度ほど訪れたことがある。何の問題もなかった」
「そう。では気のせいか」
「そんなことよりも早く蜜柑を採りに行こう」
「龍蓮、収穫からするのか?」
「無論。それが風流だからな」
・・・それは風流か?
疑問に思うが、別に嫌なわけではないため早速収穫できる場所に向かう。


蜜柑は採ったその場でおいしく頂いた。

そういえば、今日泊まる宿に向かおうと果樹園を出ようとしていたところ、何やら慌ただしく人が入ってきた。
「急げ!!また当主様が御乱心だ!!」などと叫んで皆籠いっぱいに蜜柑を採っていった。
わたしたちの収穫していた場所はどこかの貴族御用達の果樹園だったのだろうか。
龍蓮はまた飽きもせず、蜜柑を頬張っていた。
「龍蓮、それぐらいにしないと肌が黄色くなってしまうよ」
「なに、黄色くなるのか?・・・このように美味なものなのに」
「おいしいものは程々がいい。また食べるときの楽しみがある」
今日だってそうだっただろう?
少し考えるような顔をした後、龍蓮は首肯した。

龍蓮を促して夕食についた。
あれだけ蜜柑を食べたというのに、そのあとの夕食も龍蓮はいつも通りどこにそんな容量があるのかわからないほどたくさん食べた。


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龍蓮、胃袋キャラになってきてる。

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