創世の間
□天然植物図鑑。
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あれは忘れもしない高1の夏。
気温湿度ともにその夏最高記録をマークしていた放課後。
オレはとある自販機の前にいた。ここはコンビニからほど近い(というかほぼ目の前)の自販機コーナー。ここにはいろんなメーカーの自販機が並んでいる。
その日、オレは小遣いを使い果たし(母ちゃんに強請るも「いってらっしゃい」の掛け声とともにビンタを一発くらいなくなく学校へ行った)財布には残金10円ちょいしか入っていなかった。
仕方ないんだ、昨日は限定フィギュアが行きつけの店で販売するとタレコミがあったんだ・・・行くしかないっしょ。
昼飯は幼馴染の弁当をササッと失敬し、クラス委員長から持参の麦茶を紙コップ1/2杯分のお情けを頂いた。
(※弁当の中身がないことに気づかれ後で制裁をくらいました)
そして灼熱の放課後。
オレは帰宅途中力尽き、コンビニを目前にどうしても○リ○リくんが食べたい衝動に駆られひたすら自販機の下をのぞいていた。
くっそ、あと50円なんだ!100円とはいわないから50円出てきてくれ!
帰宅をともにしていた悪友たちは呆れた顔をみせながら先にコンビニに入って行った。
だったら50円貸してくれ。むしろ奢れ。
そんなときだった。
「おにいさんどうしたの?」
おとしもの?
自販機の前で行き倒れるように小銭を探していたら(アスファルト滅茶苦茶熱い)背後から幼い声がした。
小銭探しに必死な俺は顔を上げずテキトーな返事をした。
「うんそうなのよ。お兄さんは○リ○リくんが食べたいの」
どうせ近所のクソガキだろ。オトナの世界はセチ辛いの。
すると声をかけてきた奴はどっかに行ってしまった。
最後の自販機にも小銭は落ちてなくてせめてコンビニでジャンプ読みながら涼んでいくかと上体を起こした矢先、ガサガサという音とぱたぱたという音が聞こえた。
その音が俺の傍まで来るとまた「おにいさん」という声が。その声といっしょにコンビニのレジ袋が差し出される。
「だいじょうぶ?これ食べれる?」
差し出されたレジ袋の中身は、
こっ、コレは!!
「が、○リ○リくんッ!」
俺が求めていた○リ○リくん(ソーダ味)だった。
やっぱ○リ○リくんはコレっしょ。
俺はレジ袋の持ち主をみた。
と、
「・・・・」
トトロだった。・・・ってそんなわけあるか!
よく見たらトトロはパペットだった。
パペットの先を辿っていくと幼稚園児くらいの小さな子どもが覗き込んでいた。
「だいじょうぶ?」
きょうはね、すごくあつい日なんだって。
だから気をつけないといけないんだよってぱぱとこうきがいってたんだ。
俺は子どものはなしを聞きながらも別のことに気を取られていた。
なにこれ天使。
麦わら帽子を被って涼しげな格好をした子どもはトトロの顔の描かれたポシェットを斜め掛けして首にはボトルホルダー、片手には買い物カゴ(こっちは小中トトロのマスコット付き)を下げていた。
ふたつのどんぐり眼に見つめられ、俺は勧められるがままに○リ○リくんを頂いた。