反逆の仮面

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ナナリーが寝ている間、彼女が好きだといった花を摘もうと花を探していると背後で草の擦れ合う音がした。
足音をさせず接近され、振り返り身構えた。
だが、そこにいたのは子猫だった。日本の猫というと三毛や白黒、茶トラというものだが目の前にいる猫は蜂蜜色の毛足はふわっとしていて、陽の光にあたっているところはとても煌めいている。瞳の色は黒、耳は丸まっている。どちらかというとEUのスコティッシュ・フォールドに近い。
なんだかこっちをじっと見つめて動かない。可愛いけれど、猫は気まぐれで、構われるのは嫌いらしい。だからしばらくしたら居なくなるだろうと再び探そうとすると目の前の猫は僕の手の届く場所に来てにゃあと短く鳴いた。
自分から近づいてきたんだから触っちゃだめとかないよな?
触れてみると、想像より柔らかく触り心地のいい毛並みに何度も撫でてしまった。その間猫は嫌な素振りひとつ見せず、ただ僕にその行為を許してくれた。
しばらくそうしていると猫は耳をぴくっとさせ、にゃあと僕の目を見て一鳴きするとどこかへ行ってしまった。
猫が消えてまもなく、スザクの声が聞こえた。

それからその猫はたまにふらりと現れ、撫でられてはどこかへ消えていく。
最初のころは僕一人のときに現れていたが、ナナリーと一緒にいるときもやってくるようになった。
そして何をするでもなく自分たちに触ることを許し、来るときと帰るときだけにゃあと鳴く。
ナナリーは友達が出来たみたい、とこの猫の気まぐれを楽しみにしている。スザクは動物が好きらしいが動物は彼を好きではないらしい。
スザクはまだ一度も出会っていない。この猫とはまったく縁がない。
話が通じるとは思わないが「1度くらいスザクのいるときにくればいいのに」と、ナナリーの膝の上で大人しく撫でられている猫につぶやくと猫は自分の方を見て眼をぱちくりさせ、にゃ、と短く鳴いた。
なんだかいままでと鳴き方が違った。そのあとも帰ろうとしないことから、もしかしたらスザクが来るまでここにいてくれるのかもしれない。じゃあさっきのは自分への返事だったのだろうか。いや、きっとただの気まぐれだ。

このときは、まさかこの猫が人の言葉を発し、人の姿になったりすることがあるとは夢にも思わなかった。

(あ!!)
(とりあえずスザク、いきなり接近するのはやめてやれ。逃げるぞ)


3日後、日本はブリタニアの侵攻を受ける。
その7日後、日本はエリア11となる。
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