右脳の見る白昼夢

□さぼたーじゅ。
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『15になったらうちの高校へ来い』
とっておきのもんを用意しておいてやる、そう言って龍は東京に帰って行った。



――あれから10年、俺はようやくここに来た。
あいつと、あいつのとっておきに会うために。

見つけた。
こいつが成神蹴治。俺のパスを軽くいなした。そして、こいつは俺をゾクゾクさせる光景を魅せた。俺はこれからこいつとサッカーが出来るんだ。


翌朝・成神宅。
「今日から俺ここに下宿するから」

「そんな話聞いてません」
「そう言われても龍の奴が死ぬ前に約束したって言ってるしな」
「じいちゃんは黙って」
「そ、そうだよね実際に来ちゃってるわけだし」
「蹴治は食べなさい」
悉く黙らされる。
「蹴治、なっちゃん怒ってるぞ」「う…うん」
「誰がなっちゃんか!!」
「とにかく!今日学校で寮に入るなりなんなり相談して―」
玄関から「ただいま」という声が。
「エンちゃんだ!」
「だれだ?」
「僕の2番目のお姉ちゃんだよ。―おかえりなさい」「「おかえり円」」
「ああ、ただいま蹴治、夏、おじぃ……ってそこのでかいのは何だ?」
「父さんが昔言ってた子だよ」
「何?ではお前が犬童かおるか?」
「円知ってたの!?」「ああ」
「今日からここに一緒に住むんだ」
「犬童かおるだ。よろしくな」
「わたしは成神円(まどか)だ。ここでの生活のことは心配ない。龍に頼まれてたからな。何かあればわたしや蹴治に訊きなさい。これからよろしくな」
「おう」
「これで龍の作ったサッカー部も廃部を免れたな。よかったな、夏。蹴治も、やっと仲間とサッカー出来るな」
「うん!」
「ちょっと円!蹴治を煽らないで!この子が喘息持ちだって知ってるでしょう?!」
「知ってる。でも、大丈夫。―この子は、走れる」
そして、
「わたしたちがいる。だから、蹴治――振り向くな。お前はいつでも前向いてろ」
「―っ、ごちそうさまでした。学校行ってきます」
「いってらっしゃい。わたしも後から行くよ」


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主は蹴治専属のスポーツトレーナーみたいなもの。父親に一緒に扱かれてきてずっと傍で見てきたため蹴治が人一倍努力家で野心家なのを知っている。
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