姫と騎士ブック
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城に入るとすぐに客間のようなところに通された。
「失礼いたします。」
軽くお辞儀をして部屋に足を踏み入れば、一番奥の椅子に座っていた人が振り替える。
立派な白髭に、金と赤でできた王冠をかぶっていた。
この方が王、か…。
「君がレッド君かね?」
「はい。これからお世話になります。」
「君の噂は聞いているよ。剣術はかなりの実力だと。うちの娘は少々我が儘な部分があるのだが…よろしく頼むよ。」
「はい。」
王は軽く自分のヒゲをいじり「さて…」といって立ち上がった。
「さっそく娘に紹介しよう。ついてきなさい。」
王の後に続いてレッドカーペットの上を歩く。
下にばかり気をとられていた俺だったが、ふと上を見ると大きな肖像画が飾られていることに気がついた。
これは…女の人……?
俺の視線に気がついたのか王が足を止め「それは妻なんだ。」と呟いた。
「綺麗な方ですね。」
「もうこの世にはいないがね。」
その言葉になんと声をかけていいか分からず俯けば、王は少し穏やかな表情を見せ「ここだよ。」と少し先の部屋を指差した。
王はコンコンと扉を2回ノックする。
「イミテ、はいるぞ。」
「どうぞ。」
中から声がして、王は扉を開けた。
そこにいたのはさっきバルコニーにいた人。
やっぱり姫だったのか。
「こいつは新しい騎士だ。今日からお前の身の回りを警備してもらうからな。分かったか?」
「はい。」
王の言葉に姫はにっこりと笑う。
…なんだかこの笑顔…。
王がチラリと俺の方を見たから、俺は一歩前にでた。
片膝をついて、右手を胸の前へ。
騎士を目指した最初の日に教わったこれは忠誠の証らしい。
姫もスカートをたくしあげて一礼を返した。。
王はその様子を見て満足気にほほえむと「まあ、仲良くやるんだぞ」と言い残し、去っていった。
扉がしまって姫は1つため息をつき、ぼんやりと窓を見つめた。
どうすればいいんだよ…。
「あの………」
「何かしら?」
「……名前を聞かないんですか?」
とにかくまずはそこからだろう。
でも姫は呆れたように笑った。
「名前なんて必要ないじゃない。“王女”と“騎士”。ただそれだけよ。」
「そうでしょうか?」
「なあに?そんなに名乗りたいの?」
「……その前に、俺を見ていただけますか?」
さっきから視線は窓の外。
俺の言葉に姫はやっとこっちを向いた。
ああ、皇族は嫌いなハズなのに、なんだかこの姫はほっとけない。
「俺の名前はレッドです。イミテ様。」
「あなた、変わった人ね?」
そんなこと言われたって、あの時見た悲しそうな顔が頭から離れないんだ。
騎士と姫
(さあ、姫の名前は?)