わーきんぐ!相馬編
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相馬さんside
俺が彼女を初めて知ったのは、とある大学の説明会だった。
期待に満ちた様子で必死に話を聞く生徒の中で、一人だけ完全におやすみモードに入っていたのを見て笑ってしまった。
それから、長く細い金髪がかった茶髪に、目を奪われた。
眠りから解け、気付いたら一人で慌てる姿に、興味を持った。
独り言が多くて、よく笑う彼女を、もっと知りたいと思った。
残念ながら、俺には他校の友達はおろか、親しい友達というのはあまりいない。
また、社交的な方ではないので、彼女の名前やプロフィールは自分で調べるより他なかった。
少し調べると家が近いことが解ったので、ちらりと話を聞いたり、観察するにつれ、だんだんといろいろなことが解ってきた。
妹と、歳の離れた弟がいること。
社交的な方ではないが、割と人に好かれやすいこと。
イギリス人と日本人のハーフで、髪の色は地毛なこと。
基本誰にでも敬語を遣うこと。けど、親しみやすいこと。
新しいバイト先を探してること。
高校まで美術部に入っていたこと。
真面目で、英語が好きで、ちょっとドジで、意外と面白いことを考えていること…。
それらを知るたび、俺はますます彼女に興味を持った。
そして俺は、彼女を知ってからだいぶ時間が経った頃、彼女と初めて会話した。
それは、たまたま彼女と同じ大学を第一志望としていて、その大学内で数回顔を合わせるようになった時だった。
俺はバイトが忙しくなり始め、彼女を前より調べることが出来なくなっていた。
というか、彼女の情報にも限界が来ていた。
残念に思いつつも、まぁこうして風化していくのだろうと片付けようとしていた矢先に、
「相馬ー」
バイト先で、店長にとあることを頼まれた。
「はい、何ですか、店長」
「新しいバイトを雇うことになった。
お前、いろいろ詳しいからそいつに教えてやってくれ」
「ああはい、解りました〜」
そんなことならお安い御用だ。にこっと笑って了承する。
「じゃ、そいつ休憩室にいるから、後よろしく」
「はーい」
ささっと仕事に一段落つけ、同じバイト仲間の佐藤君に一言言って休憩室に向かう。
「初めまして、相馬で―――」
「……え?」
そこで俺は、彼女と初めて会話したのだった。
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