わーきんぐ!相馬編
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「…………ああ゛っ」
「ん?どうしたの?里香ちゃん」
「い、いえっ、何でもないです。…あ、相馬くん…」
「なぁにー?」
「あの…申し訳ないんですけど、今日はちょっと寄るところがあるので…帰り、別でも良いですか?」
「寄るところ?」
「はい、ちょっと野暮用で…」
「里香ちゃんの野暮用って凄い気になるんだけど、ついていっても良い?」
「駄目ですっ。今日の帰りは別ということでお願いします」
「ちぇー。寂しいけど、里香ちゃんが言い辛いことなら深く詮索するのはやめとくよ」
「ありがとです。私、相馬くんのそういうところスキですよ」
「…っ!里香ちゃんズルい!凄いズルいよ今の台詞!けど俺超トキめいた!」
「うああそういうこと叫ばないで下さいっ…!」
「えへへ、御免、つい」
「もー…(えへへとか可愛いな…)それじゃあ真面目に仕事しましょう」
「そうだね。背後にいる佐藤君が微妙に掲げたおたまが俺の頭に直撃する前にね」
「はい、本当に」
「では、失礼します。おやすみなさい、佐藤さん、相馬くん、八千代ちゃん、店長、山田さん」
「気をつけて帰れよー神里」
「また明日です里香さん!」
「またね、里香ちゃん」
ペコリと頭を下げ、足早に去っていく里香ちゃんを見送る。
あら…?そういえば、
「どうして今日は里香さん一人なんですか?
相馬さん送ってってあげないんですか?倦怠期ですか相馬さん」
私が疑問に思ったこと(プラスα)を、先に葵ちゃんが相馬くんに尋ねていた。
いそいそと近寄り、葵ちゃんと並ぶ。
「私も気になったわ。ケンカでもしたの…?」
「そんなんじゃないよ、二人とも。何か里香ちゃん、今日は用事があるんだって」
「用事…?用事という名の浮気ですか!?ドロドロ展開ですか!?」
「そういうこと期待しないの」
「いたっ」
葵ちゃんの言葉に、相馬くんが軽くチョップをした。
そ、そんな、浮気だなんて…。里香ちゃんに限ってそんなことないと思うけれど…。
「何だ。相馬、神里と上手くいってないのか」
いつもより若干不機嫌そうに杏子さんが言う。
ふっ不機嫌な杏子さんかっこいい…!
いつもより17度眉が上がってて、お腹空いたが7割何があったが3割の今だけしか見れない貴重な杏子さん!ああっずっと眺めていたい!
け、けど…。里香ちゃんのことも気になるわ、やっぱり…。
「そうじゃないですよ、店長」
相馬くんが少し焦ったように否定した。
そうね、ケンカとか別れるってなったらどちらかが辞めるとかだものね…。
「たまたま今日は、里香ちゃんに用事があって。俺には知られたくないみたいでしたけど、」
言いかけて、にっこりスマイルで小声で呟く。
「……今からつけるつもりだし…」
き、聞こえなかったわ!私には何も聞こえなかったわ!
「それじゃっ、俺も帰るね〜」
「え、ええ、さようなら、相馬くん」
「轟、大丈夫か」
顔を青ざめる私を心配して、佐藤くんが声をかけてくれる。
「佐藤くん…。ごめんなさいね、何でもないわ」
ただちょっと、相馬くんの発言に驚いちゃっただけで…。
「佐藤くん、ありがとう」
「っ…。………気にするな」
「…?佐藤くんも、顔色が」
「大丈夫だ気にするな」
「で、でも…」
「それより店長が腹減って死にそうだぞ」
「杏子さんっ!?」
今すぐパフェを作ってくるわ!待ってて杏子さん!
すぐに踵を返してキッチンへ向かう。
「ああっ佐藤くん、材料が無いわ!」
「片付けたからな」
「杏子さんのパフェが…。杏子さんが死んじゃう…」
「死なん」
「佐藤くん……」
「…死なん」
「さとーくん……」
「………。ああもう…。
……材料、勝手に冷蔵庫から出せ。ただし必要最低限な。俺はもう帰る」
「ありがとう佐藤くん!また明日ね〜」
「はいはい」
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