わーきんぐ!佐藤編

□5品目
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「暴力を抜いた伊波さんみたいですね」

一部始終を見ていたようで、店長に呼ばれて消えた志麻と
入れ代わるように小鳥遊が現れるなりそう言った。

なるほど、確かにその通りかもしれない。

「じゃあ志麻も管轄は小鳥遊か」
「ちょっ、やめて下さいよ佐藤さん!俺は伊波さんだけで手一杯です!」
「そうだよー。志麻さんの担当は佐藤君」

ヘラリと笑いながら言う相馬に、眉を上げて反論する。

「…何で俺だよ」
「似てるから」

――その理由はどうかと思うんだが。

「いいじゃない、志麻さんも男を克服しないといけないんだし。面倒見てあげなよ、佐藤君」
「…似てんなら、小鳥遊の言う通り伊波だろ。二人で助け合って小鳥遊で克服すればいい」
「でも、俺も伊波さんもフロアですよ」
「…………。じゃあ相馬が」
「俺も協力はするよ。けどやっぱり似てる人と一緒に頑張った方が良いと思うんだ。
それとも、佐藤君は志麻さん嫌い?」

――嫌い、と聞かれるとな…。

別に好きでも嫌いでもない。あわよくばからかいたいと思ってもいる。
だけど面倒臭そうだ、と思うのも事実だ。

「さっきは育て甲斐がありそうって思ってた癖に」
「相馬。お前は簡単に人の心を読むな」
「じゃあ佐藤君で決定だね!」

はぁ、と溜め息をつき、事実上それが肯定の証となり俺はシマリスの飼い主となった。

ちょうどそこにひょっこりとしっぽ…ではなく顔を覗かせる志麻。

「あ、帰ってきた。おかえりー」
「……ただいま」
「今日から佐藤君が志麻さんのお世話係になったから、佐藤君をどんどん頼っていいよ!」
「…え、…?」

――つーか、よく話しかけるのは相馬なんだから、相馬が面倒見ればいいのにな。

そうは思ったが、まぁからかえるくらいまでには育てるか、と適当なことを思い志麻の頭に手を置く。

「……?お世話係…?」

不思議がる志麻の頭をぽんぽん叩き、俺は頷いてみせた。

「らしいな。ま、よろしく、シマリス」
「シマリス……」
「リスみたいだから志麻リス」
「………志麻リス」

志麻リス、志麻リス、と繰り返し呟く。

――何だ、シマリス気に入ったのか。

ならよかったな、という思いを込めて頭をわしわし撫でると、力に負けてぐらぐら揺れながら、


「―シマリス」
「――――」


―志麻は、気付けば綺麗な笑顔で笑っていた。


思わず撫でていた手を止める。

志麻は笑みを戸惑いに変え、ちろりと俺を見上げるが、
顔を逸らす俺に首を傾げたまま、再び撫でられる力に身を任せていた。









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