わーきんぐ!佐藤編

□6品目
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「さーとうくーん」

やけに嬉しそうな顔をして、更には花まで飛ばして相馬がやってきた。

その『面白くてたまらない』的笑顔にイラッとしたので無視する。

「ちょっ、佐藤君、この距離で無視は酷くない?」
「……何だよ」

話を促すと、相馬はいっそう顔を輝かせ、

「佐藤君、志麻さんに恋したでぐはっ」

――おーまーえーはー……!
――だから無視したくなんだよ…ッ。

フライパンを掲げて無言でバシバシ叩くと、ようやく相馬は黙ることにしたようだった。

「…つーか、別にしてねえよ…」
「あっ、そういうのはナシだよ佐藤君。俺には解るんだから」
「…意味が解らん。あと、好きになる原因が解らん」
「原因、って……。佐藤君の場合、"初めて見せた、思ってたより可愛かった笑顔"でしょ」
「………」
「痛い!すっごく痛い痛い痛いけど髪引っ張るってことは
認めたってことだねイタタタ痛痛い!」
「相馬お前………」

じっと睨むが、相馬は全く気にした風もなく引っ張られた髪を押さえている。

はぁ、と溜め息をつき、自然な動作で違和感無く相馬の首を絞めながら、

「ちょちょちょ息がッ……息が出来ないよざどうぐん…ッ」
「……お前、そういうことぜってぇ誰にも言うなよ……」
「わ、解ってるって……そんなことしないよ……ッ!しないから息が息が…ッ」
「………」

力を抜いて手を離すと、どさっと倒れて酸素を求め始めた。

――ま、そこまで信用無ぇ奴じゃないとは思うけど…。
――何より相馬に感づかれたということ自体で胃が痛い。

くそ、うっかりときめいてしまった己を怨みつつ、それでも笑顔を思い出して…、


「…………」


…また、笑わせてやりたいな、とか思った。


「……が、とりあえずはからかう対象になるくらいまでは成長させてやんねーとな」
「佐藤君………」









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