わーきんぐ!佐藤編

□7品目
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「さとーさん今大丈夫ですかー?」
「何だ、種島。コップか?」
「はい…。届かなくて…」
「へいよ」

さっと受け取り、軽々棚にしまう。

「ありがとう佐藤さんー」

へらへらと笑う種島の頭をがしっと掴み、ポニーテールを引っ張る。

すると種島がきーきー言いながら、

「あ、そうだ佐藤さん!キッチンに新しい人入ったよね。志麻楓さん」
「…おお。話したか?」
「うん、話したよ!」

――確か志麻は男に免疫が無くて人見知り、だったか。

女だと流暢に話すのか、と思い詳しく聞いてみると、

「んー。そんなに口数は多くない方かなとは思うけど…。
でも緊張してるだけで、しっかり働く良い人だと思うよ?」
「種島の評価は大概『良い人』だな」
「だっ…だって本当にみんな良い人だもん!嘘じゃないよ!?」
「あーハイハイ」

適当にあしらい、髪いじりを堪能してから手を離す。

もー、またぐちゃぐちゃにしてー!と怒る種島に菓子をやって落ち着かせ、仕事に戻った。


―と。

「―それで、伊波まひるさんは男性恐怖症で、男の人が近付くと殴っちゃうんだ」
「……殴る……」
「相馬、何やってんだ」
「ああ、佐藤君」

俺に気付き、にこにこと笑いながら志麻に頷いてみせる。

「今ね、志麻さんにワグナリアに働いてる人の紹介をしてあげてるんだ」
「……相馬が良い事をしている…だと…!?」
「ちょっと佐藤君!?俺の評価ってそんなに低いの!?」
「冗談だ」

詰め寄ってくる相馬を手で追い払い、ぼーっとしている志麻の頭に手を置く。

また志麻は大きめの瞳をぱちくりさせてこちらを見上げ、

「……どうして、置くん…ですか?」

珍しく志麻から話しかけてきた。

内心驚きつつ、志麻からの問いの答えを探す。

「ちょうど置き易い位置にあるからじゃね?」
「…そう、ですか」
「志麻さん、置かれるの嫌なら嫌だって言って良いんだよ」

フォローのつもりか、相馬が人当たりの良い笑顔で話しかける。

「そうだぞ、嫌なら言えよ。……それを知った上で更に置き続けてやる」
「佐藤君」

しかし志麻は例によって少し首を傾げ、ふるふると振って否定した。

「…嫌じゃ、ないです。……大丈夫」
「ん、そうか」

ま、それはそれで良し、と頭を撫でる。

それを見た相馬がぽつりと、

「種島さんを可愛い可愛い言って撫でる小鳥遊君みたいだね」

――まぁ、聞かなかったフリだ。









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