あのころの未来に…

□第5章 文通〜それは恋文〜
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梓は地元にある公立高校へ進学した。
さすがにJとは違う高校に進学したが、学校の方向は一緒だったのだ。

アズサへ
高校進学おめでとう。
日本では15歳までが義務教育なんだね。
俺の住むロシアでは17歳までが義務教育なんだよ。

高校ではどんな生活になるのかな?
落ち着いたらでいいから、学校での様子を教えてね。

ユーリより


梓は今もユーリと文通が続いていた。
文通開始当初はこんなに長く続くなんて思いもしなかった。
今は完全に彼女の心の支えとなっていた。

ある秋の日。
下校中にある人から声をかけられた。

 「梓ちゃん、今、帰り?」
 「J!そうだよ。一緒に帰ろう。」
 「いいよ。そういえば梓ちゃんさ、ユーリ君とは連絡とってるの?」
 「相変わらず文通してるよ。」
 「そっか。」

梓はJの寂しそうな顔を見逃さなかった。
ただこの時の彼女は原因が自分にあるとは思いもしなかった。

 「J、どうしたの?」
 「ううん、なんでもない。」
 「大学なんだけど、Jは理工学部の受験だっけ?」
 「うん。梓ちゃんは国際関係学部だっけ?」
 「そうだよ。」

二人は帰り道で大学進学の話をしていた。
受験まであと1年ちょっと。今から少しづつ頑張っていかないといけないと思っていた。

 (梓ちゃん、どうやら僕は君に恋をしているみたいなんだよね。)

Jは梓とユーリが連絡を取っているのを確認すると“自分の入り込む隙がない”と嫌でも感じてしまう。

2005年・3月−。
梓とJは高校を卒業した。
梓は第一希望の大学の国際関係学部に合格した。一方のJは浪人することとなった。


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