誰にも言えない恋だった…
□第2章 世界グランプリ
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世界グランプリも後半戦へと突入した。
ビクトリーズは決勝戦に行けるかどうか、微妙な位置となっていた。
そんな時にリーダーでもある烈がオーディンズ戦で大けがをして入院することになった。
「烈君、きっとどこか無理してたんだね。」
「そうだね。」
ある日の下校中、梓はJとそんな話をしていた。
梓は“烈のためにも落ち込んでいる暇はない”と思っていた。
だがJにそのことを言ったらプレッシャーになると思い伝えるのをやめた。
烈が入院中の2週間の間にビクトリーズは2勝してシーズンレースを終えた。
4位のチームがビクトリーズを含め3チーム。
今度の試合は決勝戦に出場できる最後の1枠を争うレースとなる。
「梓ちゃん、昨日ね、夜遅くに烈君が研究所に来たんだ。」
「えっ?そうなんだ…。でも烈君って入院中だよね?」
「新しいマシンを作るのにお父さんの協力で病院を抜け出したみたいで…。」
烈の復帰とニューマシンのデビュー戦となったレースで、無事に決勝戦へ行けることとなったビクトリーズ。
決勝戦でもビクトリーズは土壇場での勝負強さを発揮し、世界グランプリを制した。
「J!優勝おめでとう!」
「梓ちゃん、ありがとう!」
梓はJの今までで一番の笑顔を見ることができて嬉しい気持ちになっていた。
この1年、Jの縁で世界グランプリを間近で体感することができたことは梓にとって大きかった。