誰にも言えない恋だった…
□第6章 誰にも言えない恋だった…
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梓は大学を卒業し、晴れてこの春から社会人となった。
子供のころから希望していた鉄道会社での就職が決まった。泊まり勤務がメインとなる駅員の仕事は慣れるまでが大変であった。
(考えてみたら場所にもよるけど駅って始発は5時台が多いし、終電は日付が変わる頃が多いんだもんね…。)
彼女の配属された駅は片田舎の駅だった。
学生から年配の方まで様々な年代の利用者がおり、梓は相手の年齢に合わせた対応の仕方を学んでいるところだ。
「茅野、最近はだいぶお客様対応に慣れてきたな。」
「あっ、ありがとうございます。」
「この調子で頑張ってくれよ。」
「はいっ!」
今日は珍しく駅長と一緒のシフトで働いていた。
駅長は仕事に対しては厳しいが、たまに見せる優しさがある。
だから梓はこの仕事をずっと続けたいと思っている。
2015年・秋―。
梓は上司からあるハーフタレントが自分を探していると伝えられた。
それはある番組の取材申し込みというとのことだったが、本当に突然のことだった。
「先日の取材なんですが、受けます。」
「茅野、お前ならそう言ってくれると思った。俺からスタッフさんに連絡しておくな。」
「お願いします。」
取材を受けるか、かなり迷った。
あるハーフタレントというは彼女がずっと逢いたいと願っていた人だから…。
この判断がのちにある効果をもたらすなんて、誰も予想していなかった。