誰にも言えない恋だった…

□第2章 世界グランプリ
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ビクトリーズの合宿が終わって1週間。
梓はこの間に手を付けられなかった夏休みの宿題を始めた。
ちなみに今日は香名と逢う約束をしていた日である。

 「梓、今日は久し振りに逢えたのに宿題をやろうなんてね。」
 「先週はちょっと手が付けられなかったから付き合って。」
 「まあいいけど…。」

梓と香名の二人は近況報告とともに宿題を一緒にやっていた。
香名の家は個人経営のカフェをやっており、お盆休みのこの時季は特に彼女の両親は忙しくしていた。

 「ねぇ、梓。」
 「ん?どこかわからないところあった?」
 「うちさ、うるさくてごめんね。」
 「そんなの気にしてないよ。ってか、香名の家は今、忙しいのにお邪魔してごめんね。」
 「ううん。それは気にしないでいいよ。」

香名は『うちはこの時季の旅行やおばあちゃん家に行くのは無理だから…。』と続けた。

 「そういえばさ…。」
 「梓、どうしたの?」
 「Jってさ、なんであんな綺麗な顔してるんだろうね。」
 「ちょっと、どうしちゃったの?」
 「えっ?」
 「梓、J君のこと好きなの?」
 「そんなんじゃないよ。急にそう思っただけ…。」

梓はビクトリーズの夏合宿中に何度か、彼に対して“綺麗な顔をしている”と思う瞬間があった。
今までずっとそばにいたとはいえ、異性としてJを見たことはなかった。
その彼女がそんな発言をしたので、香名は本当に驚いていた。それと同時に梓に春が訪れようとしているのかと感じていた。
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