あのころの未来に…

□第6章 君の住む街
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2005年・春−。
梓は第一希望の大学の国際関係学部で勉強することにした。
第二言語はロシア語を履修しようと考えていたため、迷わず選択した。

 「茅野さんは外国に友達いるんだ!」
 「…まあね。最後に逢ったのは小学生の頃なんだけど、未だに文通が続いてるんだ。」
 「それは凄い!でもメールアドレスの交換をして、電子メールで連絡取ったら?」
 「それ思いつかなかった…。今度、手紙にアドレス書いてみるよ。」

大学でできた友人にユーリの話をさらりとしていた。
このころには携帯電話やパソコンが一般家庭にもかなり普及していた。
それなのに梓は電子メールでユーリと連絡を取るということをしていなかったのだ。

ユーリへ

無事に大学に合格し4月から大学生になったよ。
パソコンのメールアドレスを作ったんだ。

良かったら下記のアドレスにメールをください。
連絡を待ってます。

茅野梓より


その手紙を出してから約1か月。ユーリから梓宛てに電子メールが届いた。
彼から初めてとなる電子メールが彼女はとにかく嬉しかった。

アズサへ

大学入学おめでとう!
早速、教えてもらったメールアドレスにメールを送ってみたよ。

無事に届いたかな?返事を待ってるよ。

ユーリより


梓は2年生に進級した。Jは浪人の末、梓の通う大学の理工学部へ入学した。
無事に受験を終え1年遅れの大学生になったJを梓は『この1年、辛抱強く頑張ったね。』とねぎらった。

 「梓ちゃん、学部が違うとなかなか逢うこともないんだね。」
 「…そうだよ。同じ学校にいるのに逢わないことが多いよ。」
 「僕さ、理工学部でしょ?だからメチャクチャ忙しいって教授たちが言ってた。」
 「時々ね、理工学部の学部棟から死んだ顔した学生が出てくるのを見るよ。」
 「そうなんだ…。」

二人は無言になる。この間が嫌に長く感じた。

 「そういえば、2年の後期から3年の前期の間、留学するから。」
 「留学?どうして?」
 「必修だからだよ。ちなみに行くのはロシア。」
 「そっか。」

逢えなかったこの1年という時間が二人にとって見えない壁となっていた。
だがゴールデンウィークを過ぎる頃には以前のようになっていった気がしていた。
大学の夏休みになると梓は空港に向かっていた。

 「梓ちゃん、もうそろそろだね…。」
 「1年したら帰国するから、見送りなんてよかったのに…。」
 「僕がしたかっただけ。」
 「…そう。もうそろそろだ。行ってくるね。」
 「うん。体に気を付けてね!行ってらっしゃい!」

梓は夏休みの期間中にロシアへと発った。
ロシアでユーリに逢うのかはわからないが、留学先での生活に不安と期待があった。
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