あの日の海風
□第1章 アルバム
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ある夏の日の朝。
今日も穏やかな1日が始まった。
ある程度の家事を済まさせた藤真夏海は懐かしそうにアルバムを見ていた。
「夏海、何見てるんだ?」
「高校の卒業アルバム。懐かしいでしょ?」
「なんでまた急に見てるんだ?」
「昨日さ、高校の同窓会のお知らせが来てたから…。」
声をかけてきたのは彼女の夫である藤真健司だ。
二人が出逢ってから随分と時間が経つ。
出逢った頃は本当に最悪なものだった。
「まさか、こんなふうになるなんてな。」
「ほんと。お互い予想すらしなかったもんね。」
「同窓会の返事はどうするんだ?」
「参加でいいよね?」
「ああ。」
高校の卒業アルバムには二人がそれぞれ所属していた部活の写真だけでなく、行事や日常の写真の掲載がある。
それだけでなく、卒業式当日の写真まで掲載されているのだ。
「しっかし、健司は写真写りが良すぎるね。」
「夏海は最悪だな。」
「失礼だ!」
「悪い、悪い…。」
二人が卒業アルバムを開くのは、恐らくアルバムが手元に届いてから初めてのことかもしれない。
卒業後にそれぞれの自宅に届いたのは卒業式の写真を掲載する都合上とのこと。