あの日の海風

□第2章 最悪な出逢い
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中学に入学するころ、吉野夏海の父が神奈川県へ転勤となった。
引っ越しを済ませ、両隣の家へ挨拶へと行った。

 「こんにちは。隣に引っ越してきた吉野です。」
 「こんにちは。今、父と母は仕事でいませんが、よろしくお願いします。」

目の前にいる少年は『僕は藤真健司です。』と続けた。
夏海は『この子、中学受験をしてなければ、同じ中学校に通うことになるのかな?』なんて思っていた。

彼は夏海に対してちょっとむっとした顔をしていた。

 (何?あの人、感じ悪いんだけど…。)

サラサラの茶髪に大きな瞳が印象的な彼は高身長で良いルックスをしている。
一瞬、女子と見間違えるほど中性的な顔をしているのが印象的だ。
夏海は『黙って立っていればいい男なのにな…。』と感じていた。

 「夏海、あいさつしなさい。」
 「…は〜い。吉野夏海です。4月からこの近くの中学校に進学します。」
 「じゃあ、俺と同い年ってことか。」
 「げっ。そうなの?」
 「同じクラスだったらよろしくな。」
 「はいはい。」

夏海は母と共に藤真の家を後にした。
少なくとも彼女の藤真に対する印象は最悪なものだった。

この時、夏海は彼と同じクラスにならないことを願っていた。
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