あの日の海風
□第3章 翔陽高校
1ページ/5ページ
高校入学後、彼との再会はすぐにあった。
受験の際は逢うことがなかったため、気が付かなかった。
中学時代、彼がらみのことで散々な想いをした。だから、あいつと関わりを持たないまま平穏な高校生活を送りたいと思っていた。
それなのに教室の出入り口には夏海の天敵ともいえる彼がいた。
「よぉ、吉野!」
夏海は凍り付き、クラスメイトは彼女に注目する。
その視線が夏海は痛く感じていた。
「同じ高校、受験してたんだな。」
「…。」
「なんだよ。」
「なんでいるのよ。」
「ここ、バスケ部強いだろ?だからだ。」
夏海はため息をついた。
藤真は花形に部活の連絡事項を伝えると嵐のように去っていった。
クラスメイトの女子には藤真のことで”キャッキャ”言われたが、夏海は二人の間には何もないことを説明した。
「そうなんだ。それなら、自分たちにも可能性があるんだね。」
「可能性って?」
「藤真君の恋人ポジションね。」
藤真はバスケ部、夏海は陸上部へ入部した。
本格的に部活動が始まると、お互い、接触を持つことなく時間が過ぎていった。