あの日の海風

□第6章 平成最後の日に…
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今日は高校時代の友人の結婚式だ。
新婦である友人は男子バスケ部のマネージャーをしていたため、藤真をはじめとする当時の部員の姿があった。

 「あれ?もしかして、教習所の吉野先生ですか?」
 「…はい。」

お互い、まさかこの場所で再会するなんて思いもしなかった。
まだ式自体は始まる前だったので、少しの間話をする機会はあった。

 「おっ! 教習所のクールな女教官様のお出ましか!」
 「花形じゃん! 久し振り!」
 「花形、お前彼女のこと知ってるのか?」
 「もしかして藤真、吉野が教習所の先生だって知らなかったのか?」
 「嘘…。お前、あの吉野か!」
 「翔陽の同級生の間では有名な話だぞ!」

藤真は夏海が学生時代の同級生だというのを本当に気づいていなかったらしい。
夏海はただ呆れるしかなかった。

 「藤真さ、あんた全く気づかなかったの?」
 「え?」
 「自分の担当指導員が中学から大学までの同級生ってことに…。」
 「全く。」

藤真は『どこかで逢ったことがあるような気がすると思ってたけど…。』と続けた。

 「いつかバレるじゃないかと思ってた。」
 「お前、だったら言えよ。」
 「悪いけど、こっちは仕事中だったからね。」

夏海は『教習生が教習所マジックにかかって、暴走すると大変なの!』と続ける。

 「俺、吉野の働いてる教習所で免許取ったんだ。」
 「そうなのか?」
 「ああ。でもあの頃、吉野は指導員じゃなかったんだよな?」
 「花形が通ってたあの頃は、まだ見習いで指導員の資格の勉強中だったからね。」

夏海は『花形が教習所を卒業してすぐに指導員の資格を取ったよ。今は検定員の資格も取ったしね。』と続けた。

 「そうなんだ。」
 「指導員の仕事、大変なこともあるけど、結構楽しいよ。」
 「そろそろ式が始まるみたいだ。近況報告はまたあとにしよう。」
 「そうだね。」

友人の結婚式は滞りなく終わった。
高校時代の懐かしさからか、夏海は藤真と花形と共に会場を後にする。

3人とも駅へと向かう。
そのあいだ思い出話や今のことを話していたため、駅まではあっという間だった。

夏海は今回のこの結婚式に出席して良かったと思っていた。
それは藤真との再会を抜きにしてだ。
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