淡い君との時間

□第2章 単語帳
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最近の夏香は下校中の電車内で英語の単語帳に目を通すようにしている。
実は英語が苦手ということもあり、登下校中の時間を有効利用しようと考えた結果だ。

 (果たしてこんなことしてて意味あるのかな…。)

今日の下校中も必死に単語帳とにらめっこしている。
どこからか視線を感じた夏香は、その方向を見てみることにした。

 (あれ?あの美少年、今日は帰りの時間、一緒だったんだ…。)

夏香は不二と同じ電車に乗り合わせているかどうか、気にすることがある。
それは中学校に入学して以来、日課となっていた。
だが特にこちらから彼にアクションを起こすことはしなかった。

 (いつか話ができたらいいな…。)

不二が彼女に気付いているかはわからないが、夏香は少しでも話ができるといいなと思っていた。

 「夏香、最近さ、不二君と同じ電車になることってあるの?」
 「朝は一緒になることが多いけど、帰りは滅多にないよ。」
 「そっか…。」
 「美咲、何かあったの?」
 「ううん。最近の夏香、不二君と同じ電車になった時、嬉しそうな顔するからさ…。」
 「そうかな?」

夏香は美咲の発言に驚いた。自分では全く意識していたわけではないからだ。
それと同時に不思議で仕方なかった。

 「不二君って、テニスすごく強いんだってね。」
 「そうなの?」
 「テニス部の子が言ってた。2年に進級したら試合でも見に行こうよ!」
 「…試合?」
 「まぁ、自分達の部活の休みと試合の日程が被ればだけど…。」
 「うん。機会があったらね。」

中学生活も1年目の終わりが見えてきた頃、二人は穏やかな昼下がりに教室での会話を楽しんでいた。
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