君に映る景色

□第1章 昼下がりの公園
1ページ/3ページ

ある日の昼下がり―。
とある中学校に通っている村田夏香は公園の風景画を描いていた。
彼女にとってはいつもの光景だ。

 (今日はここを描くぞ。)

夏香は中学校では美術部に入っている。
そして高校は美術科のある高校で勉強をしたいと考えている。
それを部活の顧問に伝えたところ、美術科の入試は学校の勉強のほか実技の試験があると教えてくれた。

 (少しでも絵を描いて先生に見てもらう。それを続けていくんだ…。)

風景画を描く場所として選んだ近所の洋風でおしゃれな公園。
その公園内でも夏香が時にお気に入りの場所を絵として描くことにした。

スケッチブックと鉛筆を手にして用意した簡単な椅子に座り黙々と絵を描き始める。
近くで遊んでいた小学生くらいの子供達が夏香の周りに集まっていた。

 「お姉さん、絵がとっても上手だね!」
 「すごーい!俺に今度教えてよ!」

視線を感じていたのはわかっていたが、突然声を掛けられると夏香はビックリした。
さっきまでボール遊びをしていた子供達が、夏香の絵に見入っていたのを気にしていなかったからだ。

 「ありがとう。でもみんなが遊ぶ場所を少し取っちゃってごめんね。」
 「いいよ。俺、お姉さんが絵を描いるところを見てるの、好きだからいいよ。」
 「私だってお姉さんの絵、好きだよ!」

張り合うように話をする子供達を見て夏香は自然と笑顔になっていた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ