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□第6章 思わぬ再会
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数年後。
夏海はとある場所へ向かおうとしていた。それは自分がかつて住んでいたシェアハウス。
―夏海ちゃん、久し振り。あのシェアハウスが取り壊されるんだって。最後に一度、見に行こうよ!―
かつてのルームメイトの一人からメールが入ったのだ。
正直言って、夏海はあのシェアハウスには良い思い出がない。だが楽しかったことも少なからずあった。
―行くよ。でもあの人達って一緒じゃないよね?―
夏海はあの二人と鉢合わせなくない一心でルームメイトに返信をした。
かつてのルームメイトからは『あの二人なら来ないから大丈夫。』と返事が来た。
「夏海ちゃん、どうしたんや?」
「昔住んでたシェアハウスが取り壊されるんだって。」
「そうなんや…。見に行くの?」
「迷うところだけど、最後に一度目に焼き付けておこうかなって思ってる。」
「そっか。酷いことした人達は?」
「その心配もあるよ。共通のルームメイト曰く、来ない可能性が高いって。」
「それなら行った方がええで。」
夏海は土屋の『行かないと後悔すると思う』という後押しがとても嬉しかった。
夏海がシェアハウスに行く決断を下したのは急に懐かしくなったから。
当時のルームメイトから『シェアハウスが取り壊される』と聴いた時は悩んだ。
(流石にあの人達には逢わないだろうから、大丈夫。)
到着するとあの頃と変わらないシェアハウスに夏海は、ほっとしていた。
遠くからではあるが前方からある人の視線にこの時の彼女は全く気付いていなかった。