君ヲ想フ春

□第1章 自転車通学
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大阪のとある場所に住んでいる村田夏香。
大阪生まれの大阪育ちでこの春に四天宝寺中学校に進学が決まっている。
学校までは自転車での通学を考えていた。

 (今日は一応、学校まで自転車でどのくらいかかるか行ってみるで。)

住み慣れた町で新しい生活を待ち望んでいる彼女は憧れだった中学校への通学が楽しみで仕方なかった。
暖かい春の風を切るように夏香は通学予定の中学校へと向かう。

 (この角を左に曲がるんだよな…。)

曲がった先にはすらりとしたかっこいい男の子が自転車に乗っていた。
どうやら夏香と同じ方向へ行こうとしている様子だった。

 「君、この辺の子?聴きたいことがあるねん。」
 「この辺に住んどるよ。聴きたいことってなんや?」
 「四天宝寺中学校に行きたいねんけど、道に迷ってもうてな。」
 「受験しに来てたんだったら、場所くらいわかるやろ?」
 「あの日、俺、おかんに送ってもろてん。なっ?ええやろ?」

目の前の彼は年相応の少年らしい笑顔を夏香に向ける。
そんな顔をすると断る理由がなくなってしまう。

 「しゃあないな。今、うちも四天宝寺中に行くねん、ついてきて。」
 「おおきに。君も四天宝寺に入学予定なん?」
 「まぁ。中学校の方だけど…。君は?」
 「俺もやねん。自己紹介まだやったろ?俺は白石蔵ノ介や。」
 「うちは村田夏香や。」

夏香は思いっきりため口を聴いてしまっていたので、高校生だったらまずいなと思っていた。
だが自分と同じ中学校に入学すると聴いて、正直ほっとしていた。
夏香が先頭で1列になって中学校へと向かう。

 「ついた。ここやで。」
 「おおきに。助かったで。」

白石は笑顔を夏香に向けた。
二人は正門の前で無言になる。

 「俺、ここのテニス部に入りたいから、早めに顔を出そうと思ってな。」
 「…そうなんや。うちは家から学校までの通学時間を調べるためや。」
 「また逢えるよな?」
 「入学式の日にまた逢えるで。うちはこれで…。」

正門で二人は別れた。
夏香は彼のことを『残念なイケメン』だと思っていたのはここだけの秘密だ。
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