□ひとりぼっちには慣れてない
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「………い、おい、レイト!」
「……あ?」

誰だよまったくうるせえなくっそ、とか心の中で悪態をつきながら(当然のごとく口には出さない)瞼をゆっくり開けると、見慣れた友人の顔がドアップで映っていた。……なんだこれは。

「おいカーフェイ、何してんだよ」
「お前がうなされてたから起こしに来ただけだっつの」

(……ああ、そっか)
どうやらあれは夢だったらしい。七年前、住み慣れた日常を強制的に何かに壊された時の、夢。
自覚してから、また動かなくなった人間だったものの山を思い出して、嫌なもん見ちゃったなあ、なんてことを考えながらゆっくりと体を起こした。ついでに言うと、ここは俺の家じゃない。七年前にカカリコ村の入り口近くで倒れていた(らしい)俺を助けてくれた、今では結構気の許せる友人でもあるカーフェイの家だ。

(……七年、)

そうか、もう、七年も経っていたのか。
俺が、得体の知れない魔物たちに怯えて逃げ出したあの情けない夜から、もう七年も経っているのだ。出会ったときには俺より少し背の低かったカーフェイだって、今では俺を追い越してしまっている。

「暇だし散歩にでも行くぞ。レイトも暇だろ?」

相変わらず、こいつの質問は疑問系のくせに有無を言わさぬ何かがある。
散歩に誘う、それだけのためにわざわざ俺の部屋にやってきて、下手したら近所迷惑で文句を言われるかもしれないようなあんな大声で俺を起こしたのかという呆れ混じりの突っ込みは心の中に置いておくとしても。「あーうん、すっげえ暇だよ」少なくとも、何もすることなくてベッドで熟睡するくらいには。

「……何だよその顔は」
「なんでもないっての」

どうやら思っていることが顔に出てしまっていたらしい((あー面倒くさい))。それでもなんだかんだで上着を手に取ったあたり、きっと俺は一人が寂しいのだろう。

( だって、そうでもなければわざわざ寝起きに散歩に行くほどの元気が出てくるはずもないのだ。 )

気を抜いたらすぐにちらつくあの恐ろしい光景は、きっとこの先一生忘れることなどできないだろう。
今だってきっと、カーフェイが居なかったら俺はひとりで途方に暮れているだけだっただろうから。
きっと今でも、俺は家族を失った隙間を埋めることができていない。トラウマだって出来てしまった。

(なあ、カーフェイ。)

教えてくれよ。
俺はどうしたら、そんな風に心から笑顔を作れるようになるんだろうな?
………答えは、いまだに出ない。





どうしようもない喪失感
(埋めることなんて、できややしない。)

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