□始まりは突然に
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いつもどおりに空は青くて、泣きたくなるほど太陽も眩しい。いい天気だ、と思わず小さく呟いた。
俺がいくらセンチメンタルな気分になろうが何も変わる筈がなくて、例えば七年前のあの日に戻れるようなことがあってもただの子供だったあの時の俺に何かができるとは思えないから、そんなことがあってもこの未来は変わらない。
それを痛いくらいわかっているからこそ、変わらない日常の中の異端はすぐに見つけられるものだ。

「……なあカーフェイ、あれ誰だ?」
「ん?」

ふと見えた緑色。それは村の誰の服とも違う色で、おまけにそいつはとても綺麗な金髪をしていたものだから、思わずまばたきをしながら隣の友人に問いかけた。誰だあいつ。

「……ああ、リンクか」

リンク?
どこか懐かしい名前のような気がして、軽く反復する。リンク、か。そんな名前を、どこかで聞いたことあっただろうか。少なくとも俺の記憶にはない。……ということは、本か何かの主人公の名前なのだろうか。
俺が一人で悶々としている内にカーフェイがどこかに行こうとしていたので、慌てて引き止める。おい親友よ、どこへ行くんだ。

「どこって、俺今日アンジュの手伝いに行くって言ってただろ。散歩はそのついで」
「そうだっけ?」

そうだよレイトお前もう忘れたのか、と呆れ顔で言う友人に(彼は息継ぎをしていなかった)、ああそういえばそんなことも聞いたっけなぁ、と昨晩のことを思い出す。ちなみに、彼の七年越し(もしかしたらもっと前からかもしれない)の一途な片思いは未だにその相手に気付かれてすらいない。大丈夫なのかそんなんで。
余計なお世話だよ、と言いながら去っていったカーフェイの背中を軽く睨んでみたりして(まあでもあいつは気付くわけがない)、そして結局暇人になってしまった俺はさてどうしようか、と頭をひねるようなこともなく、
いつの間にか、まだそこにいたらしいリンクとやらのなぜかやたら男前に見える横顔に向かって(決して美形ウラヤマシイとか思ってない)話しかけていたりしたのだ。あれ、何やってんだろ俺。

「……お前、どこかで会ったことあったっけ?」

ちなみに、この質問には口に出した俺自身も驚いた。おい、さっき分からないって自己完結させただろ自分。なにやってんだ(二回目)。


記念すべき出会いってやつで
( 要するに、これがはじまり。 )

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