恋する時間

□提案
1ページ/2ページ





――あれ?ここ、どこかしら。

広い草原の中、一人佇む私。


――そっか…。これ、夢の中なんだわ。


こんな場所、ハートの国には無いし。



ふわっとした風が吹き、草原が揺れる。


『あ、あなたはっ…!』


「クフフ…。お久しぶりです。…と言っても、まだ1日しか経ってませんが」


目の前には、私に変な魔法をかけた、魔法使い―六道骸がいた。




提案




「どうですか?あれから何か発展しました?」


『発展…?冗談じゃないわ!あなたのせいで、私あいつらに馬鹿にされたのよ!』


「おや、何故僕のせいなのです?」


『…そうやってとぼけるつもり?とにかく、変な魔法解いてよ!』

「言ったでしょう?貴女が恋に落ちた相手とキスするまで解けないと」


『だから、私は恋なんてしないわ。第一あんなろくでなしばかりの奴らなんかと!』


すると、骸はクスクスと笑い出した。


『…なによ』

「いえ、ハートの国にはたくさんの男たちがいるのに、もう限定されてる方たちがいるとは…」


『はぁ?だって、私、あいつら以外の男たちとは関わってきたことないもの』


「なるほど。では、やはり貴女はあの5人の中の誰かに恋をするわけですね」


『だから、言ったじゃない。それは絶対にないわ』

「クフフ…。そんな風に言い切っていいのですか?」


『だってありえないもの。想像も出来ないし』


「恋はいつだって突然落ちるものですよ」


骸は、そう言い微笑んだ。


―突然落ちるもの…?
そんなすぐに人の気持ちが変わるものかしら。



「では、こうしてはどうです?」

『…なによ』

「貴女が彼らの家に1日泊まるのです。一緒にいれば、何か変わるかもしれませんよ」


『…そんなの面倒よ』


「まぁ、そう言わず。2人きりでいることで、貴女が彼らに抱いている気持ちが変化するかもしれないですよ」


それに、と骸は続ける。



「貴女は消えてしまいますよ」



どくん…と心臓が跳ねる。

骸が、真剣な顔で言うからよ…。
でも、彼の表情から冗談じゃないことが分かった。


――やっぱり私、消えちゃうのね……。




『……わかったわ。消えるのなんか嫌だし、あなたの提案に乗ってあげる』


それに変な魔法のせいで死ぬなんて、
悔しいじゃない。


だったら、恋でもなんでもしてやるわ。


「貴女がその気になってくれて安心しました」



―――では、健闘を祈ります…。また会いましょう。



そう言い、一際強い風が吹いた後には、骸の姿はそこにはなかった。




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ