コードネーム鬼茶
□第4話 悪夢の復活祭
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「ほら、コレかぶって。」
ウチの胸に赤いヘルメットが投げ込まれる。
あいつはいつの間にかおそろいのをかぶってるし。
こわごわとヘルメットを装着する。そして黒の塊にひょいと飛び乗った。
「ほな、行こか。」
「ほんじゃあ、詩織、後始末は任せたっ!」
そうして大きな車体はぐるんと一回転してその場から走り去った。
「後始末って・・・?うわっ!」
詩織は「今の人だれ〜?」という声と人だかりの渦に飲み込まれた。
「ばかやろ〜!」
☆ ☆
御所を右手にして駆け抜けるバイクの風が肌寒い。
押し寄せてくる風がごうごうと耳の中で渦巻いているように感じる。
ジャケットが風に揺らめいてバタバタと音を立てた。
ウチは眠気と戦いながらも振り落とされないように必死にはとむぎの腰にしがみつく。
「鬼茶、内臓つぶれそうやから力緩めて!」
言われたとおりにすると今度は落ちてしまいそうで怖い。
ウチはカーブを曲がるときのバランスと力加減に悪戦苦闘していた。
「ウチは電車通学やから道わからへんで?」
「あー、俺は四条からやったらわかるけど。」
四条か、そこまでやったら何とかわかるかも。
こうして碁盤の目のようになっている通りをずーっと南下する。
はとむぎのタバコのにおいが染み付いたジャケットをひたすら握り締めていた。
「学校はどうなん?」
「すっかりなれたわ。まぁ、毎日の通学はクタクタになるけど。」
電車とバイクってどっちのほうが早いんやろか。
「で、今日はなんで来たん。こっちで仕事?」
1年間音信普通やったのに急に来るなんて思ってもいなかったわ。
「まぁそんなとこ。仕事もだいぶ落ち着いてきたし、そろそろ会ってもいいかなって思って。」
「ふーん。」
本当はうれしいって言いたいけど、そんなに素直にはなれない。
「寂しかった。」
聞こえるか聞こえないかというくらいの声でぼそっとつぶやいた。
たぶん、バイクの爆音でかき消されているやろう。
「あのさぁ、プーアールは?」
「ルパンを迎えに行ったで。ほんまにご愁傷様やわ〜」
ご愁傷様?なんか悪いことでもあるんかな。
「そんなことよりも・・・うわっ!」
突然ぐらりと車体が大きく揺れた。大慌てで体制を整える。
「ちょ、あほか!?」
「ごめん、いや、その・・・」