コードネーム鬼茶

□第1話 パニック!ハロウィーン
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 コードネーム鬼茶(キティ)         第一話 パニック!ハロウィーン

「ふぁ〜」

10月、ウチは欠伸をしてソファーに寝転がる。今日は暖かくて気持ちいい。

「なぁ鬼茶、タバコ買ってきて。」

椅子に腰かけて雑誌を読んでいたプーアールが声をかけてきた。

「いやや。今眠たいねん。」

「いーやん。どうせ仕事無いやろ。」

仕事といっても普通の仕事ではない。現にウチはまだ12や。

仕事。それは、”怪盗” 悪にまみれたお宝を可憐に盗み出す。それがウチの仕事。鬼茶は仕事の時のコードネームや。

「仕事があっても無くてもタバコは買いません。タバコの臭いは息がつまりそうや。」

「俺はタバコが無かったら息がつまりそうなんや。あっ、はとむぎ、タバコ一本くれや。」

ほんで、このタバコ中毒の人はプーアール。

「はい、また鬼茶にタバコ禁止されたん?」

そして、この人がはとむぎ。この二人は情報屋で良いことも悪いことも教えてくれる。

ギィー

「遅れてごめん。みんな今日は早いな。」

「ルパンが遅いねんで!どこうろつきまわってたんや?」

最後にルパン六世。本人はルパンの家系やと言い張っているけど、ほんまかどうかはわからない。そやけど、大事なウチの相棒。

「それはそうと、出かけるで。」

なんで?今めっちゃ気持ちいいねんけど。

「仕事や。」

仕事 その言葉を聞いてがばっと起き上がる。

「今回はどこに行くん?」

本格的に鬼茶モードにスイッチを切り替えた。やってやろうやないか。

「ネズミーランド。そこにある”コッカ”がターゲットやで。」

ネズミーランド・・・ってあの超巨大遊園地のことか?

「そ。詳しくは後で言うから早く行こ。」

「おう!」

しばらくして −−−−−−


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ


相変わらずこれには慣れんわ(涙)

今ウチらは地下に秘密で掘ったトロッコでネズミーランドに向かってる。

「大丈夫なん?顔が歪んでるで。」

ありがとうよ、はとむぎ。でもそんな言葉にも返事できそうにないわ・・・

「しっかしよ、あの怪盗鬼茶がこんなちょっとスピードの速い乗物に弱いとは思わんやろな〜」

うっさい!ぅ、しかし早く着かんの・・・

「あのさルパン、なんか今回の仕事にはどうも探偵が絡んでくるみたいやで。」

「しかも年はおまえらと同い年の<黄昏探偵団>っていうガキの探偵団で、関東では絶大なる人気があんねんてよ。」

同い年の探偵か、ちょっと興味あるな。

「香くんが出てくるとは、面白くなりそうやねぇ。さ、もうすぐ着くで。」

たっ、助かった〜 でも香って誰や?

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「はっ、はぁーくしょん!」

だれかが噂してるのか?まぁ、どうせ俺がカッコイイとかそういうことだよ、絶対。

「香、今オレがなんて言ったか聞いてたか?」

えっ、あっ、当然!この香サマが聞いてないはずないだろ!?

「香、やっぱり聞いてなかったんでしょ。」

「まったく・・・」

なんだよ!『キョウ』だけじゃなくて彰良、新季までもそんな目して。はいはい、聞いてませんでしたよーだ。

あっ、申し遅れた。オレ、黄昏探偵団団長の睦月 香。こんな名前でも男だからそこん所よろしく。

団員は今オレの目の前にいる3人。

溜息をついている茶髪のが加藤 克貴。ルックス抜群の今、大人気のスーパーモデル。
芸名はキョウでそれを知っているのは黄昏の団員、それと・・・あいつだけ。

そして、こっちをジーっと睨んでるのは双子の蔭山 彰良・新季。外見、しぐさ、性格、発言のタイミング、すべてにおいて同じで、たまに

どっちがどっちがわからなくなるくらいにそっくりの一卵性双生児だ。

話を本題に戻そう。

「今回の依頼人はネズミーランド取締役社長の金剛 時政氏。依頼内容は怪盗ルパン6世&鬼茶からお宝を守ってほしい、だってさ。
しかも、オレは同時にそこのパレード出演も同時に依頼されてんだよ。」

ルパン6世か。となると、鬼茶というのは・・・

「香、ほんとに聞いてる?」

もちろん。自分でも顔がにやけてくるのがわかる。本当にこの偶然に感謝するぜ。

「おもしろくなりそうだな。」

早くあいつらに会いてえな。おまえら待ってろよ。

「なんか、香の顔怖い。」

「ついにおかしくなったか?」

うるさい!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

どうも、はとむぎです。存在感が全くないって思った人、そりゃそうやで。だって台詞がまだ一文しかないんだもの。

今、僕らはネズミーランドに到着したばかり。鬼茶はまだ少しげんなりとした顔やけど、まぁなんとかなるやろう。

「僕とプーアールは表の仕事でここのイベントに参加するから援護はたぶんできひんと思う。」

僕らは表の仕事もコンビでやっている。それがなにかはもうすぐわかると思うよ。

「わかった。あと注意があんねんけど。」

ルパンが急に真顔になる。こんな顔みたのはひさしぶりやな。

「もし、睦月香っていう小、中学生くらいの男の子が来たら気をつけて。それと、あんまし感情的にならんといてな。」

あぁ、やっぱし気づいてたんか。僕らの気持ちを。でも、鬼茶は複雑な顔をきっとしているであろう僕らをぽかんと見つめてる。

そりゃそうだろうな、だって知らないんだもの。僕らとあの人との因縁も、”コッカ”の秘密も、鬼茶自身に隠された秘密をも・・・

えっ、これで僕視点おわり?そりゃないよ〜




「今回はあの怪盗ルパンと鬼茶との対決ということですが、勝算はありますか?」

「キョウ君は鬼茶とルパンから宣戦布告されているようですが?」


「勝算はもちろん!コテンパンにしてやるぜ。」

「まぁ、がんばります。」

「ちょ、ちょっとどいて!」

ネズミーランドに着くなり、マスコミからの質問の雨あられ。香は自信気に答え、キョウは営業スマイルをふりまき、彰良・新季はまぶしい
光の大軍を押しのけながら進む。

そうして一同はなんとか指定された場所に到着した。
ここからマスコミは入れない。

「ふぅ、まさかあれだけの人が押し寄せてくるとは。」

「『キョウ』はいつもあれだけの報道陣に対応してるとはすごいね。」

「ふだんもすごいが、ここまでの数となると異常だな。」

すっかりクタクタになってしまった4人はそのビルの最上階に通された。

「・・・・・・」

その部屋を見て、誰も言葉を発せずにいた。

「この壁って金箔張ってる。」

「すげぇ、全部ブランドものだ。」

「このテレビ一体何インチ!?」

それはそれはすごいのだ。

4人がその部屋の光景に目をひんむいていると、

「お待たせしました。私が金剛 時政です。」

髪をオールバックにした金剛氏はそこにいるだけで大物のオーラを放っていた。

「ささ、どうぞ座ってくださいな。」

うながされて座ったソファは世界最高級品のものだった。

「団長の睦月 香です。」

「『キョウ』です。」

「蔭山 彰良・新季です。」

みんなはとりあえず自己紹介をする。香が敬語を使うのは異例だった。

「さて、早速本題に入りましょう。今日ここでパレードがあります。その時に我が宝”コッカ”を皆さんにお披露目します。ところがそん
な時に届いたのがこれです。」

金剛氏が胸ポケットから取り出したカードは血のように赤く、どうやら金属でできているようだった。

金剛時政様
     
前略

来るハロウィンパレードの日に”コッカ”をいただきに参上いたします。

 あなたの悪事は見逃さない。

              怪盗ルパン6世&鬼茶より

「悪事、ね。私にはもう善と悪の区別もつきませんな。」

金剛氏のひとりごとは悲しさを含んでいるように聞こえた。

「さて、ここで紹介しておきたい人がいます。入ってください。」

ガチャ

外から入ってきた人はやけにきびきびとした歩き方で近づいてくる。

「ルパン6世&鬼茶事件担当の宇治原 健太です。」

皆にかざした警察手帳はきらりと光り、まだ新しそうだ。

「本当に探偵を雇ったんですね・・・」

その言葉は少し訛りがあって、香たちを不思議な感覚にさせた。

「黄昏探偵団といえばいま一番信頼のある探偵だよ。まぁ、関西の君があまり知らないのも無理ない。」

その言葉で4人は訛りについて納得した。

「まぁ、あのねずみ達を捕まえるためならこれぐらいのことかまいません。それと、出演者の人全員が中に入りましたので裏門は閉めさせ
てもらいました。」

「そうですか。それならパレードまでの間は楽屋で待機しといてもらいましょう。黄昏さんは出演者の調査もしたいでしょうし、
『キョウ』君はあいさつもしたいでしょうから。」

金剛氏はどうぞ、と言いエレベーターで下の階へ通す。

下の階は先ほどまでの部屋があまりにも派手すぎたので、とても地味に思えた。

「どうぞ、ご自由になさってください。私が良いと言っているのですから誰も逆らえませんでしょうし。」

その人の笑みは不敵の笑みだった。
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