コードネーム鬼茶

□第2話 湯煙ロンリーナイト
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コードネーム鬼茶       第2話 湯けむりロンリーナイト

ピーピコピコピコ

新年早々、真剣な表情でゲームに食らいつくはとむぎ。その後ろで見守るウチら。

迫りくる敵を次々と打ち落としていく。

「なあ、ここのゲーセンって何点入れば商品くれるん?」

えーとね、1万5千点。

「じゃあ、もうええな。」

ゲーム画面は3万点を示していた。

お、恐れ入ります・・・

「相変わらずのゲーマーっぷりやな。」

はとむぎがこんな点をたたき出さないほうがおかしいといわんばかりに言ってのける。

「1等賞はペアの温泉旅行やって。はい。」

えっ、くれるん?

「俺その日は仕事あるし。お前ら2人で行ってきたら?」



ってなわけで、やってきました!!雲山温泉!

関西の温泉といえばここ!やっぱりこの時期にはたくさんの人がいるんやけど、今日は平日やからちょっと少ない。

「えーと、朝霧旅館、あさぎり・・・ここや。」

駅からてくてく歩いてでやってきたのは情緒ある古い旅館。木造のこじんまりとしたとってもよさそうな所。

「やっぱり、あのゲーセン屋の賞品やから古いなあ。」

「でも、これはこれでいいんとちゃう?」

うん、こっちのほうがいい。ゆっくりできそうやし。

さーて、寒いしそろそろなかに・・・

「あ〜!」

なんやねん、こんな時にこんな所で!

「あのさ、俺ら子供やん。」

まあ・・・ぴちぴちのローティーンやけど。

「ピチピチかどうかは別として俺ら2人だけで泊めてくれると思うん?」

あ・・・・・・

「いつもみたいに変装したらいいか?」

「でも、お風呂に入ったらばれちゃうしな。」

勢いでこんな所まできたのが間違いだったかぁ。でも、ここで引き返したくないしな。

「誰か知ってる人に“連れ”やって言ってもらうとかは?」

「そんなうまいこと知ってる人なんて現れるわけが・・・」

「あ〜!!!」

今度はなんやねん!あれ、でも違う人の声や。

声のするほうに振り返ると・・・

いたぁーーーー!!!!!知ってる人!

「ちょ、なんでここにいてるん?」

いやいや、仕事があるってこの温泉券を譲ってくれたんはあんたやで!はとむぎさん!!!

「どないしたんや?」

影からひょっこりでてきたのは、はいもうおわかりですね。プーアールです。

「今日はロケで来てんやけど、まさか旅館が一緒だったとはな!ルパ・・・」

しーっ!!ウチは慌ててはとむぎの口を押えこんだ。

「ここでその名前はあかん!」

とにかく事情を説明し、2人の連れということにしてもらった。

「特に、他にもスタッフとか俺らの仲間もいてるから注意せなあかんで!」

はとむぎはメッチャ天然やからな・・・

そんな事を考えていると後ろから声が・・・

「2人ともこんな所でなにしてるんや?」

「それに、この子たちは?」

「栗本さん、祐介君が呼んでますよ。」

ま・ず・い!

そこから、ウチは大慌てで頭の中に脚本をつくる。

「はっ、初めまして。ウチ、栗本さんの友人の娘なんです。それで今日呼び出されて。」

「お、俺もす。」

栗本ってたしかプーアールの表の名前やったよな!?(1話参照)しかし、さすがに友人の娘ってのはいかんかったかな・・・

「そやねん、この2人には祐介のおもりを頼んでん。」

ナイスフォロー!でも、祐介って誰??

「おとーさぁーん。」

「祐介、新吾と遊んでおきって言ったやろ?」

え・・・もしかして、プーアールの子供ぉ!!!!

ルパンに目で合図すると向こうも目をひんむいている。

プーアールが子持ちで、しかもそんな息子がイケメンやなんてぇぇぇ!(きっと奥さんに似たんだろな。プーアールの子供とは思えん。)

子供好きだから大歓迎や!

「栗本さん、そうなら早く言ってくださいよぉ〜」

そう叫びながら後ろから息を切らした男の人が走ってきた。

「えーと、これで全員そろったな。」

2人の仲間は計4人(+幼児1人)。

「初めまして。俺、新吾。君たちが来てくれて助かったよ。」

特徴的な黒ぶち眼鏡、抜けるような白い肌。なんか、イケメンというよりはカワイイっていう感じやな。

「新吾の相方の直太です。ほんと、新吾は祐介くんのおもりで大変だったんだよ。」

黒色の短髪にところどころ剃りこみをいれてて、オシャレ。絶対に関西の人じゃないやろ。

「こんにちは。あっ俺、星崎光一。よろしくな。」

優しそうな一重の目に、真っ白な歯。絶対本物の歯じゃないやろ。

「・・・・芦田圭人です。よろしく。」

たった1人だけぼーっとして、なんかスイッチ入ってない感じ。
でも、その顔。切れ長の目に整った眉、ワックスをかけてわざとクセをだしている髪の毛。

きれいな、顔だった。

「芦田、お前なにぼーっとしてんねん。シャキっとせい!」

とたんにプーアールの喝が入る。

「とにかくよろしくな。」

その微笑みに悲しさが含まれていたような気がしたのはウチだけ?

ウチはその時の顔をきっと忘れないだろう。

そして、

「こんにちは!」

くりっとした目、つやつやとしたほっぺた。

「こんにちは、ウチらといっぱい遊ぼうな!」

ちいさな頭でこくっとうなずくのがまたかわいい。

「祐介君何歳?」

祐介君は手を思いっきり広げる、ってことは5歳か。

「年中さんやね。」

「うん!」

ウチらが出会ったのも幼稚園やから、ちょうどそれくらいやな。

「さっ、いこっか。」
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