コードネーム鬼茶

□第2話 湯煙ロンリーナイト
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木製の大きな引き戸をガラガラっと引くと藤色の鮮やかな着物を着た女の人が。

「ようこそおいでくださいました。わたくしが女将の朝霧綾子でございます。」

女将というからにはそこそこ歳なんやろうけど、つやつやとした肌、黒髪をまとめたその姿は若く見える。

「表はお寒かったでしょう?どうぞ、お部屋でゆっくり暖まってください。」

飛び入り参加したウチらにも、豪華な和室の部屋が割り当てられた。ま、ルパンと相部屋なのはしょうがないか。

畳の香りが2人を包み込む。

「中はあったかいな。」

「外があまりにも寒すぎたんよ。あっ、見て!」

窓ガラス越しにみえる雪の花。ちらちらと降っている。

「すご〜い!」

「大阪では一年に一回降るか降らないかぐらいやもんね。」

2人でしばらく積もっていく雪をじっとみつめていた。

「合格おめでとう。」

「そっちこそおめでとう!春からはお互い晴れて中学生やな。」

ウチら2人は私立中学校を受験し、合格したのだ。

「でもな、あの2人にはいつ言おうか?」

確かに、合う回数が減るということは怪盗としての活動が減るということ。当然”コッカ”への道のりも遠くなるということだ。
そして、4人でワイワイ騒ぐ時間も減ってしまう。あの幸せな時間が。

「とにかく、この旅館にいる間に言っとかないとどんどん先延ばしになるし。あっ、もう撮影始まるから表出よっ。」

ウチは外の賑わいを口実に部屋を飛び出した。

表ではもうすでにたくさんのスタッフさんたちで賑わっていて、その辺りから湯気が出るほどだった。

「あれ、芦田さんと祐介君は?」

新吾さんがキョロキョロと見まわすけど、2人の姿はどこにもない。

「祐介とは一緒に部屋を出たのに。お〜い、祐介!?」

「は〜い。」

旅館の影からちょこちょこと祐介君がでてきた。とりあえず一安心。

「祐介君、お父さんにちゃんとついていかないとあかんで!?」

だって、と言ってうつむく祐介君。

「でも、こ〜んぐらいにおっきな青色のダイヤモンド見たんだよ!!」

青いダイヤモンド!?それってもしかして・・・

”コッカ”!?

そのころ・・・・・・

「芦田、もうみんなそろってんねんぞ!早く支度せい!」

携帯電話をじーっと見つめていて相方の声も聞こえてるのか定かではない。

「今行く。」

ちなみに、この地域は携帯の電波が届かない。

「そのメールのことずーっと考えてたんやろ。」

「ずーっと考えてた。」

オウム返しの返事が終わるか終らないかの挟間でコール音が部屋に響く。

「圏外やのに鳴ってる・・・」

「出るわ。」

ピッ

「もしもし。」

「モシモシ、キノウノメールミテイタダケマシタカ?」

「ええ、見ました。」

「デ、ドウスルンデスカ?イモウトサンヲミツケタクハナインデスカ?」

「・・・わかりました。俺、組織に入ります。」

「ソウデスカ。ナラサッソクデスガ、ミッションデス。キティハコノリョカンニアル、フタツメノ”コッカ”ヲネラッテイマス。ソレヲソシシテクダサイ。」

「鬼茶が・・・わかりました。では、失礼します。」

ピッ

一息ついて携帯を机に置いた。

「お前、あの話を信じるんやな。」

「おう。このチャンスを逃したくはないんや。」

「たとえ危険だとしても、やるんやな?」

「やる。」

星崎はふう、と息を吐き出した。

「なら、俺もその組織?に入る。」

「おい・・・」

「俺かてこのまま鬼茶を野放しにしておくつもりはさらさらない。それに・・・相方やろ!?」

芦田は笑みを星崎に向けた。

「わかった。俺もお前も言い出したらきかんのはよくわかってる。2人で必ず探し出そうや。」

「おう。」

「おっと、いかんいかん、みんなを待たせてるんやった!行くぞ!」

「おっと、そうやった。」

2人がいなくなった部屋には携帯電話の光っている画面があるばかりだった。



date:2007 2/8 9:06

from:kuronekogumi.chisya.jp

件名:妹さん
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初めまして、私はコードネーム:シャムです。
私は長年行方不明になっている貴殿の妹さんが怪盗鬼茶に拘束されているという事実をつかみました。我々、黒猫組に入団して共に
茶から妹さんを救出しようではありませんか。

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