コードネーム鬼茶
□番外編 それぞれのプロローグ 〜昔話をしよう〜
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「この社会は、3つに分かれている。1つは警察や一般の人たちの世界、白。ここは表社会とも言う。」
「1つは凶悪犯罪者や殺し屋たちの世界、黒。」
「そして最後、怪盗や情報屋などの正義や信念のために犯罪をする人たちの世界、灰色<グレー>。」
「ちなみに、黒と灰色<グレー>をひっくるめて裏社会とも言います。」
「で、俺たちは白とグレーの両方ってとこやな。」
・・・はあ、なんかようわからん話やけど、やっぱりそういう裏社会的な話やったんか。
「そろそろいいころです。私たちのコードネームをお教えしましょう。」
コードネーム、スパイ映画か何かでそんな話があったな。
たしか、本名を隠すための通り名のはず。
「俺は昼は食品会社の社長やが、またの名を情報屋のカリヤという。」
「私は一介の不動産屋ですが、これでも怪盗ルパン一族の5代目です。」
・・・・・・?
まさか、この現代に情報屋やまして怪盗なんているのか?
「それがいるんですよ。現にここにね。」
そんな事、信じられるわけが・・・
「え〜、すごい!俺ルパンのファンなんですよ!」
いたよ、信じてるやつが。
「そして、ここからが本題だ。なぜ、お前ら2人が追いかけられるはめになったか。」
そうか、この信じがたい話はまだ前置きにすぎなかったんや。
「君たちが先ほど見たあのシャムという男いるだろ。あれは黒の世界の住人や。」
やっぱり、どうみてもそういう風にしか見えない。
「しかも黒の世界で一番大きな犯罪組織、黒猫組の一員だ。」
黒猫組・・・そういえば、さっき社長、いやカリヤさんがそんな事言ってたな。
「黒猫組がなぜ追いかけてきたか、その理由は配達の荷物にある。」
ルパンさんはそういうと、おもむろに荷物を手に取り、梱包を一気にはがした。
手の中で赤い光の塊がこうこうと輝いている。
「これは・・・」
「驚いたやろ、これは俺が発見した宝石その名も”コッカ”や。」
”コッカ”・・・なんてきれいな赤色なんやろ。
「まだ1つしかできていないが、もう少し作るつもりや。」
「でもなんで”コッカ”なんて名前にしたんですか?」
「それは、最初は国花の桜のようなピンク色やったからってのと、国家が手に入れたいほど価値があるっていう意味でつけた。」
桜色がこんな血のような深紅になるなんて不思議やし、こんなのを見つけたカリヤさんもすごい。
「で、国家がほしがるくらいといったようにいろんな人間がコレを欲しがった。黒猫組も例外ではない。」
「そこで、いったんこれをルパンに預けようとしたのだが、私が持っていくと怪しまれるから君たちに持っていってもらった。その結果、
こうなった。」
はあ、それなら最初からせめて助けて欲しかったです。
「そんな、怪盗は美しい仕事をするんだ。鬼ごっこの手助けなんてしたくない。それに・・・」
「俺は2人ならできるとわかっていた。だからこれを任せて、なおかつ組織に勧誘してるんやないか。」
えっ、勧誘・・・?
「もちろん漫才は続けてもらわないと困る。この組織は兼業で表も裏も両方やってるし。」
「それに、すでに君たちはあいつらから目をつけられた。このままなら君たちが危ない。だからね。」
そういわれても・・・
そんな気持ちとは裏腹に、やりたいという気持ちがふつふつとわいてきた。
それ以前に、いろいろと助けてくれたカリヤさんとルパンさんに恩返しがしたい。
そう思ってきた。
「俺、やりたい。」
ついにその言葉をしっかりと、確実に言っていた。
「そうか、なら俺も。」
こうして、俺たちはこの組織に入ることになったのだった。
「カリヤ、当然この子達は情報屋だ。」
「そうか、お前の目でそう思ったのならそれでいい。」
「ああ、彼らはいい筋はしてるが、怪盗の超人的なものではないね。」
情報屋か・・・うん、そうしよう。
「コードネームはどうする?」
カリヤさんがお茶を入れてくれながらそう聞いてきた。
お茶を注いだ湯飲みを置いた後、タバコに火をつける。それはセブンスターやった。
白い煙がゆうらゆうらと部屋に舞った。
「あれ、これお茶がそれぞれ違う。」
「そや、日比谷君ははとむぎ茶、栗本君はプーアールやで。」
へ〜このお茶初めて飲んだけどなんか気に入ったな。
「なあ、コードネームははとむぎとプーアールでええんちゃう?」
えっ、お茶の名前か。
「いや、漫画にそういうキャラクターおったやん。」
たしかに、俺たちが好きなそれにそんなのがいた。しかも、けっこうな男前やったはず。
「じゃあ、それでええか。」
こうして情報屋はとむぎとプーアールが誕生したのやった。