リミット

□好きなワケがない
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夢を見た。
オレ達ブックマンが伯爵側について、アクマがエクソシスト達を殺す景色をただ見ている夢。
オレはみんなが殺されていくのをただ傍観しているだけ。
オレに助けを求める奴等をひたすら屋根の上で傍観するだけ。

ドクッと波打つ心を押し込む様にそれを見ていると、すぐ近くにアリスが誰かを探しながら走って逃げていた。
後ろからはいくつものアクマが追ってきて、アリスはそれから逃げながら名前を叫んでいた。

「ラビー!!」

オレの名前を。
暫くするとアリスは行き止まりに追い詰められて。周りをアクマが囲んで彼女に逃げ場はない。
そんな時にオレはアリスと目が合った。
他の奴らみたいに助けを乞うのか、なんて思っていたらアリスはふいに微笑んで「よかった」小さくそう呟いた。
そして呟いた瞬間、アリスはアクマに殺された。


ただの夢、そんなことはわかっているのに冷や汗が止まらない。
あまりにもリアルで、オレがブックマンだからこそ将来ありえる夢。その現実に、目の前が真っ暗になった。
ただオレは、それが現実になってほしくないだけ。

「ラビー!!」

夢の中で聞いた声に、肩を大きく上げて驚いたオレは今精神的に疲れているんだと思う。…あんな夢、見なきゃよかった。

「…なにさ、アリス」
「あれ、元気ない?」
「…アリスはいつも元気さね」
「そりゃあ、最近任務行ってなくて体力持て余してますから」

そう言って頬を膨らますアリスに苦笑い。
前と元気なのは変わらないと思うけどな。

「そんなアリスちゃんにいい報告が来たなりー!」
「なにキャラ?」
「実はね、明日から任務に出ていいって許可貰えたの!」

その言葉を聞いて一瞬思考が停止した。

「先に行ってる人達と現地で会うんだー」

笑顔で言うアリスにやっとオレは話の内容を理解する。

「…そりゃあよかったさ」

心臓がまた煩く鳴り出して、思わず手で抑えてしまった。
目を閉じて浮かび上がるのは、さっきのあの言葉と笑顔。それに亀裂が入っていくのを感じながら、目を開いてアリスの頭に手を置いて歪な笑顔を向けるとアリスは首を傾げた。

「ラビもその任務に行くんだよ?」
「……そっか。……って、え、?」
「あれ、聞いてなかった?」

アリスの言葉に再び思考が停止。
すると向こうからリナリーが走って来るのが見えた。

「ラビ、兄さんが呼んでたんだけど、今大丈夫?」
「まだ言われてなかったんだね」
「アリスは明日に備えて早く寝たらどう?」
「そうだね、また明日」

手を振ってここを去るアリス。
なんかこの状況、デジャブ。

顔を固まらせてリナリーを見ると、アリスに向かって手を振っていた。
内心ホッとして踵を返すとリナリーに腕を掴まれて。

「アリスのこと、守ってあげてね」

ニッコリ笑顔で言われてしまった。

まぁ、元からそのつもりだけど。




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