短編

□君色橙色
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「ラビってさ…オレンジだよね」

朝、珍しく一人でパスタを食ってたら目の前に名前が来て、オレの髪に視線を向けたままそんなことを言ってきた。


「急にどうしたんさ?」

前の席に腰掛けた名前の手にはケーキとジュースが乗った盆。一応、それが朝ごはんらしい。


「んや、ラビのイメージカラーってオレンジだなーって思って」


ケーキを頬張り、頬杖をつく名前。依然として名前はオレの髪を凝視していて視線が合うことはない。
てかそれが朝食って身体に悪くね?
ちゃんと朝食を取れるように残り少ないが、自分のパスタを名前の皿に乗せながら口を開く。


「そりゃ髪がその色だからっしょ」

自分の髪を一束取って色を確認してから名前の首元に目線を送った。いや、深い意味はないけども。


「そういや、名前の持ち物ってオレンジが多いよな?」


名前が付けているネックレスや部屋の様子を思い出して口に出してみる。部屋の家具はオレンジで統一されているし、私服もオレンジが多かった気がする。
すると名前はジュースが気管に入ったのか、噎せて咳き込み始めた。

「だ、大丈夫か…?」

ちなみにそのジュースもオレンジジュースだったり。
名前の隣の席へ移動し、背中をさする。


「問題はそこなんだよ…」 
「?」

小さく呟いた名前の言葉の意味がわからなくて首を傾げた。

「どういう意味さ?」

そう訪ねると名前は勢いよく頭を上げた。そしてその頭は必然的にオレの頭へ激突して。


「……っ、!」

じーんとした痛さに頭を抱え耐えるが、名前はそんなオレをお構いなしに話を続けた。
名前痛くねーの…?


「ラビさ、髪染めてよ、茶色でいいから」
「は?」

またまた急に変なことを言い出した名前さん。
彼女の思考にはいまだについていけない。

「なんで染めるんさ?」
「いや、そうすればイメージカラー変わるでしょ」
「そういうもんですかね?」
「そういうもんです」

立っている名前が座っているオレを見下ろしながら言ってくる。
なんだか今日の名前は可笑しい。朝一で俺の髪に触れたかと思えば、次は染めろだなんて。
そんな名前に疑問が浮かぶ。

「なんでオレのイメージカラーにこだわるんさ?」

率直な疑問をぶつけると名前は顔を曇らせた。

「ラビのイメージカラーがオレンジって私、嫌なんだよね」
「……その言葉の意味は?」

名前はオレが傷付かないとでも思っているのだろうか。今のは結構グサっときた。
口元を引きつらせながら目を伏せている名前の言葉を待つことにした。

「…私さ、オレンジが好きだから自然と私物もオレンジ色のやつが集まるんだよね」
「……」
「でもオレンジっていったらラビじゃん?」
「まぁ世間体では…」
「それで、その…あの、」


急に言葉を濁した名前を不審に思って顔を上げると、名前の顔は真っ赤に染まっていて。

「…この前、リーバーさんに“何だかラビ色に染まってるみたいだな”って、言われて…」


顔を赤くして、目に涙を溜める名前。
この反応はまさか。なんて少しの期待が膨らむ。
だって今までどんなにアピールしても気付かなかった名前が、まさかこんなことで意識してくれるとは。


「すごく恥ずかしかったんだからねっ…!」

そう言って顔を手で覆う名前の頭に手を乗せてわしゃわしゃと撫でる。きっと今のオレは口元がだらしなく緩んでいるのだろう。


「これからもそんな風に意識してくれっと嬉しいんだけどねぇ」
「はぁ?てか、ちょっ、ラビ!髪がボサボサになる!」

ニヤける顔をごまかすように名前の頭を撫でた。
これからは遠慮せずにグイグイ行こうか、なんて決意したのはオレだけの秘密。




fin
 

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