短編

□夏バテご注意
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「あぁー…暑い…」
「………」
「なんでこんなに暑いんさ!」
「………」
「つか団服暑すぎ…」
「………」
「蝉もうるせぇし…」
「………」
「ほんとうるさいさー」
「テメーがうるせぇよ」


せみが泣いてるこの季節。
気温が気になるこの季節。
暑さが気になるこの季節。
ラビがうるさいこの季節。

「はい、ずばりその季節は?」
「は!?えっと、夏?」
「えっとじゃねぇよ。夏しかないじゃん」
「オレがうるさい季節って聞いたことないさ」
「あぁ、もう毎日うるさいもんね」
「そんなに騒いでないと思うんですケド…」
「騒いでる。てかうるさい。もう黙って暑いから」
「…………」

とうとうやってきてしまったこの季節。
私が1番嫌いな夏がやってきてしまったのだ。
私は暑いのが苦手でそれはもう教団で1番嫌いだと自負してるほど嫌いで、冷房とアイスがないと生きていけない。
そんな季節によりにもよって暑苦しいラビと長期任務に借り出されてしまって、今はどっかの国の大きな町のはずれの花壇に腰かけてるだけ。ちなみにラビは隣に立ってる。
空からは輝かんばかりに太陽が紫外線を放出しまくっていて、まわりに日陰はなくて、団服はめちゃくちゃ暑くて、でも脱いだら半袖で日焼けしちゃうから脱げなくて、蒸し焼き状態で。
とにかく私は今、窮地に立たされていた。

「暑い暑い暑い暑い暑い暑い」
「ちょ、恐いから名前」
「大体なんでこんな任務なわけ?不審人物の監視とか探索班でも出来るじゃん」
「……まぁまぁ、」
「大体その不審人物が屋敷の中で寛いでるとかどういうこと?私達は死ぬ気で外で様子伺ってるのにさ」
「あは、は…」
「この炎天下の中っ…早くアクション起こせよ不審人物!」
「落ち着けって」

私が暑さでイライラして花壇の雑草を毟ってるとラビが団服を脱いでその団服で煽ってくれる。
それをありがたく思いながらさっきとは逆に静かになったラビに疑問が募る。
さっきのが効いたのかな。
なんて思って首を傾げてラビを見てみると、なんだか顔が赤かった。

「ラビ、顔赤いけど大丈夫?」
「へっ?あ、だっ大丈夫さ」

そう言ってバタバタと団服を大きく上下する。
扇ぎすぎて風が来ないし。

「全然大丈夫じゃないじゃん。熱中症とかで倒れないでねー、私が面倒だから」

前を向いて自分の手で扇いでいると、隣からはぁ、とため息が聞こえた。
そしてしばらくすると人の気配も消えて、ラビがどこかに行ったのがわかった。
私、冷たくしすぎた?

さっきのラビのため息の理由とかどこかに行ってしまった理由などを考えながら頭を抱える。大方、私が性格悪いから呆れて去ってしまったに違いない。

でも私が冷たいのっていつものことじゃん。むしろ私が優しいのって年に何回かあるかないかの確率だ。しかも私アレンとかリナリーに(ラビ限定の)ツンデレとか言われてるし。自覚はないけど。
それにラビだってなんか満更でもなさそうな顔してるじゃん。
…なんかラビが変態に見えてきた。
いや、変態だけどさ。って論点ズレてる私。
どうしようもなく頭を抱えて心の中で叫んでると頭に何かが被せられた。

「!?、って、冷たっ!」

頭に被せられた物を触るとなんか湿っていて冷たい。
ようやく頭が回ってきてそれが水に濡らしたタオルだと理解したと同時に今度は首に冷たいものが触れた。

「ひゃっ!」

びっくりして前を見ると私の前に屈んで、してやったり顔のラビが手にペットボトルを持っていた。

「ラビ…?」
「アイスと飲み物買ってきたさ。あと、日焼け止めも買ってきた」

そう言って袋を持ち上げるラビ。
そんなラビに少しときめいてしまったのは内緒の話。
ラビが買ってきたアイスを二人で頬張りながら不審人物の屋敷を見つめる。

「てか、急にいなくならないでよ」
「へ?」
「なんか、私が冷たくしすぎて呆れちゃったのかと思った…」
「…………」
「……ラビ?」
「……名前、それ反則」

そう言ったラビの顔はさっきと同じように真っ赤だった。


(そう言えば、さっきなんで顔赤かったの?)
(ん?あぁ、なんか汗流してて肌が少し赤くなってて目が暑さで潤んでた姿がエロくて…)
(………変態)



fin
 

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