時を超えて-book-
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「柚葉さん…僕なら、大丈夫だ……ただの人間ごときにやられるようなやつじゃない」
「…!」
妖館のセキュリティは、妖怪をマンション内に入れないことを基準としているから、“ただの”人間が入ってきただけでは、発動しない。
「…っ…、」
急に怖くなってしまった。
震える手を握り、その場にしゃがみこむ。
一応、変化はしておく。
ああ、撃たれる。
そう思い、どうにもできなくて、目を瞑る。
バン、バァン!!
そっと目を開ける。
双熾が、銃を、手で止めていた。
ふと、瞬きをして落ち着かせる。
…と、後ろからぎゅう、と。
「…っ!」
「柚葉、大丈夫か?」
「拓真…」
むぎゅうと抱きついてやった。
「拓真……、ありがと」
「おお……、って柚葉!?」
その男に歩み寄ると、怒り任せに頬を殴る。
驚いたのと、殴った力が強すぎたのとで、男は気絶した。
同時に、私はちよちゃんに謝る。
「…ごめんなさい…っ、セキュリティに対人間用を加えるべきだった…、」
「っ!あ、謝るな…キミは、悪くない」
「…」
「…悪くない、から。頼む、謝るな」
「…ありがとう」
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