時を超えて~BOOK~

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数日後、花の水やりに向かったところだった。


「あ…!」


鉢植えには、ローズマリーの白い花。

それを見たとき、何かが体中を駆け巡った。

カーテンを揺らす心地のよい風に、酔いしれそうになりながら――…



「――に似合う花だね、綺麗で、小さい花」

「えー、――くんっぽいよ、なんだか…儚くて…?」

「えー、それどういう意味…」



過去のことを、



「ねぇ、――くん。ローズマリーの花言葉って知ってる?」

「んー…知らないや」

「あのね―――…」



思い出すまで、あと少し、



「――、もしまた来世で会えたら、運命だね」

「そうだねー…きっと、会えるよ」

「うん、そうだ。会えたら、ぎゅーって抱きしめて“おかえり”って言うんだよ」

「うん、わかってる…きっと会えるね。だってこんなにも、大好きなんだから」



…懐かしい、思い出。
あれは紛れもない、遠い前世のできごとだ。


「…会えた…」


あのときの君は、



「大好きだよ、柚葉」

「うん、私も――…残夏くん」



あなただったんだね、残夏くん。


ローズマリーは、優しい風と共に、ゆらりと揺れた。



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