航海士 シン

□春の訪れ
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その後も○○は、梅の木を見におじいさんの家へ行き、タケルが宿まで送っていく日々が3日間ほど続いた。

漸く、リュウガの元に有力な情報が舞い込むとメンバーを呼び集めた。

「○○は、どうした?」

リュウガが見渡すと○○の姿が無かった。

「ぼ、僕、○○さんの部屋に声を掛けたんですが返事が無かったんで・・・」

「シン、○○は?」

「知りませんよ。俺も一応、声を掛けましたが・・・」

「寝てるんじゃねぇの?」

「まさか、こんな時間から寝てないでしょ。」

口々に○○の心配をしている時だった。

タケルに送ってもらった○○が礼を言い、宿への階段を上がって行った。


その姿を見たシンがガタンと大きな音立てて立ち上がると○○の部屋へ向かった。

シンは、苛立ちを隠さずに乱暴に○○の部屋をノックした。

中から暢気な声で「はーい。」と言いながら○○がドアを開けると怒り心頭のシンが立っており、○○は異様な殺気を纏うシンにおののき後ずさりを始めた。

「し、シンさん・・・ど、どうしたんですか?」

○○を部屋に押し込めるとシンは、後ろ手でドアを閉めた。

「○○、どう言うつもりだ?」

「えっ、な、何がですか?」

「一人で町を歩くなと言わなかったか?俺達が情報収集に奔走している間にお前は・・・」

「ご、ごめんなさい。だ、だって・・・」

○○が言い終わらぬうちにシンは、○○をベッドに叩きつけ覆いかぶさった。

「だって何だ?」

「え、えっとですね・・・み、みなさん、ほ、ほとんど出っぱなしだし・・・食事も一人だし・・・そ、そんな時におじいさんが声を掛けてくれて・・・お家にお邪魔したんです。」

「で、さっきの男は?」

「おじさんのお孫さんです。」

シンが○○の耳元に唇を寄せると「ふーん、好きなのか?」と囁けば

キョトンとした顔でブンブンと頭を振る○○に

「何日か前、お前、公園でデートしていただろ」

「で、デートって・・・あれは・・・宿に送ってもらう途中に公園があったから案内してくれただけで・・・」

「楽しそうにはしゃいで無かったか?」

唇が触れそうな距離でしゃべるシンの吐息が○○の唇にかかり、恥ずかしさから一気に顔を真っ赤にさせて否定した。

「さぞかし一人、楽しい日々を過ごしたんだな。こっちは大変な思いをしていたのにな。」

「・・・楽しい日々って・・・し、シンさんだって・・・そ、その・・・」

「娼館で楽しんでいたと言いたいのか?」

娼館と言う言葉を聞いた○○が急に大きな瞳に涙が浮かんで頬を伝った。

「どうした?何で泣いている?俺が娼館で何をしようとお前には関係ないだろ?」

「そ、そうですけど・・・」

「だったら泣く必要も無いだろ?それとも俺の事が好きなのか?だから泣くのか?」

募る思いを胸に抱え、自分なりに必死に抑えていたけれど伝えたい気持ちがいっぱいになり、とうとう爆発してしまった。

「わ、私は・・・し、シンさんが好きです!大好きです!だ、だから・・・そ、その・・・しょう・・・娼館へ行って欲しくないんです!」

○○の怒鳴るような告白にシンは、目を見開くとすぐに不敵な表情を浮かべると

「色気の無い告白だな。告白の仕方も知らないのか。ガキだな。」

「どうせ私は・・・ちんちくりんで色気の無いガキです。・・・シンさんに相手にされないのは・・・わかっています。だから・・・今の・・・わ、忘れて下さい。」

○○が顔を背けるとシンが耳元に唇を寄せ囁いた。

「忘れて欲しいのか?残念ながら忘れてあげねぇよ。」

「えっ」

「教えてやるよ、告白の仕方とやらを」

シンが優しく○○の頬を両手で添え、自分のほうへ顔を向けさせると優しく口付けをし

「俺もお前のことが好きだ。今から俺の目の届く範囲にいろ。わかったな?」

再び、甘く蕩けるような口付けを飽く事無く何度も交わした。




end
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