♪コラボしちゃった♪
□2年後/2年前
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2年前(スーさま作)
「よく聞け、野郎ども!今この時をもってシリウス海賊団は・・・解散する!」
俺は何回も何回も練習する。
その言葉を発する度に『本当にそれでいいのか?』という疑問が頭をもたげた。
しかし・・・それ以外の選択肢は思いつかなかった。
俺が海賊王でいられたのは、無敵を誇る仲間達と・・・その船―シリウス号―があったからだ。
それが例え借り船であったにせよ。
シリウス号は俺の手であり、俺の足同然だった。
あの頃・・・バッカーニアと契約した頃の俺には、何も怖いもんなんてなかった。
自分の腕ひとつで、何でも出来ると思い込んでいた。
年々莫大になる賃貸料だって、自分の稼ぎでどうにでもなると粋がってたんだ。
しかし、年を追う毎に俺には守るもんが出来ちまった。
バッカーニア。
海賊の世界を裏から支配している、殺しても死なねぇ海の怪物。
それと対峙するには、俺は多くを得てしまっていた。
次第に重くなる海賊王の名。
大切な仲間達。
俺の船、シリウス。
そして愛する○○。
気付いた時には、どうにもならねぇところまで追い詰められていた。
シリウスヲ取リ上ゲラレ、呪イデソノ命モ落トスコトニナル
俺は初めて恐怖を覚えた。
大切な者、愛する者を手に入れたからこそ、知った恐怖。
コイツらまで呪いに巻き込むわけにはいかねぇ。
そして俺はひとりで空回りしていく―。
失くしてしまうならいっそのこと、俺の方から手放してやる!!
取り上げられるんじゃねぇ、自分の意思で手放すんだ。
・・・それは俺のギリギリのプライド。
そう思い込むことで、必死に自分自身を納得させたんだ。
もちろん船員の誰にも、本当のことなんて言うつもりはなかった。
あの日の俺は・・・
自分勝手で傲慢な男に見えただろうか。
むしろそう見えてた方がいい。
精一杯張った虚勢。
解散を告げた時、俺は決心していた。
○○はヤマトに帰そう、と。
呪いで朽ち果てていく男の姿なんか絶対に見せたくなかった。
俺という男を綺麗な想い出にして欲しかったんだ、○○。
俺が自ら手放したもん大きさに愕然とするにはそう時間はかからなかった。
胸のポッカリと穴が開いて、スースーと風が吹きやがる。
俺は酒に救いを求めた。
飲んでる時だけが現実を忘れられるんだ。
酔いの中で、俺は海賊王だった頃の余韻に浸れた。
信頼できる仲間達と七つの海を越え、お宝探しに出かけられた。
ずっと○○を俺の腕の中に抱いていられた。
朝から飲んだくれ、いつしか俺は夢の現実の狭間に陥っていた。
そんな時、偶然にロイと出逢ったんだ。
ロイは俺を見て驚いていたが、すぐに酒瓶を取り上げた。
「返せ」
「いやだ」
「返さねぇと・・・ここで・・・ぶった斬るぞ?」
「斬れるもんなら斬ってみろ。そんな鈍った腕で俺様を斬れるんなら、な」
「・・・・・・」
「何があった?全部話してみろ」
「・・・・・・」
俺はヤケになって全部ロイにぶちまけた。
その次の瞬間。
ロイのヤツ、笑ってた。
笑いながらこう言いやがった。
「リュウガ、お前は最高の仲間を持ってんだろ?ならシリウスを再結成して船を取り戻せ。バッカーニアなんてやっつけちまえよ」
「・・・え?」
「海賊王リュウガ。お前は最強だぜ」
「ロイ・・・」
俺は不覚にもロイの言葉に泣けてしまった。
そうと決まれば話は早い。
俺はひとりひとり船員達を呼び出す。
もしかして現れねぇヤツもいるかと思ったが・・・。
そこにはシリウス海賊団の懐かしい顔ぶれが揃っていた。
仏頂面のシン、戸惑った顔のナギ。
まっすぐな目で俺を見るソウシ。
そして逞しく成長したハヤテと大人っぽくなったトワ。
俺はニヤリと笑った言った。
「よく聞け!お前達を呼び出した理由は、ほどんどウソだ!
「!!!」
メンバーに動揺が走る。
それを尻目に俺は声を張り上げた。
「シリウス海賊団再結成を宣言する!」
「「「「「ええっ!?」」」」」」
改めてひとりひとりの顔を見る。
俺はなぜあの時、コイツらを信じてバッカーニアのことを話さなかったんだろう。
笑ったり馬鹿にしたり、責めたりするヤツなんか誰もいねぇ。
ちっぽけな俺のプライドが、目を曇らせちまっていた。
「・・・ってことなんだ。だからよろしく頼む」
俺はみんなに頭を下げた。
「そのことはわかりました。でもどうしてここに○○がいないんですか?」
シンが刺すような視線を向ける。
「それは・・・」
俺に全員の目が集まった。
「2年前、○○はヤマトに帰した。あの時の俺はどうかしてたんだ。あれだけのイイ女だ。今頃・・・今頃・・・いや」
「???」
「俺はお前達と共にシリウス号を必ず奪い返す。そしてあの船に乗ってヤマトに○○を迎えに行きたいと思う」
「「「「アイアイサーッ!!!」」」」
ああ、これだ。
俺が求めていたもの、俺が欲していたもの。
燃える思い。煮えたぎる血潮。
最強で最高の仲間達とバッカーニアを倒す。
そしてシリウスを取り戻す、絶対に。
夕焼けがうろこ雲を照らし、澄み切った青い空と茜色が交じり合い、秋を感じさせている。
思ったより随分時間がかかっちまった。
だが。
死闘を繰り広げた末、俺達はバッカーニアを倒しシリウス号を再び手にした。
なあ、○○。
お前はまだ俺のことを待っててくれるんだろうか。
「しばらく一人になりたい。お前は、ヤマトに帰れ」
と冷たく突き放した俺を。
今更何をって言われるかもしれねぇ。
いや、言葉すらかけてもらえず無視されるかもしれねぇ。
もしかしたら誰かと幸せに暮らしているのか?
俺には何も言う資格がねぇことぐらいわかってる。
だからこそ一縷の望みを抱いて、ヤマトの地に降り立つ。
大海原を見渡せる丘の上。
たくさんのコスモスに囲まれる○○の姿。
何て声をかけよう?
俺は逸る心と溢れ出す愛情と、ほんのわずかの不安を胸に○○の背中に声をかけた。
end.