見習い剣士 トワ
□ぬいぐるみに嫉妬して・・・
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「ねぇ、トワくーん!見て!見て!これ、カワイイでしょ〜!」
「うん、カワイイね。どうしたの、これ?」
「これね、今、子供たちに大人気のキャラクターのぬいぐるみなの!」
○○が嬉しそうに楽しそうにトワの目の前に並べて行く。
「・・・カワイイけど・・・何のキャラクターなの?何か、ネコのような?ソフトクリームのような・・・?」
「このオレンジのが・・・」
順に何のモチーフのキャラクター達なのか説明しなが、ニコニコと微笑む○○。
時折、頬ずりしては、ふかふかの肌触りを堪能している。
トワは、そんな○○の姿に「カワイイ〜」と感じ、ふと、視線を○○のスカートに移せば、ポケットから何か出ているのに気づいた。
「○○さん、ポケットから何か落ちそうになっているよ?」
「あっ!これはね、キーホルダーだよ。これもカワイイでしょう〜!ぬいぐるみと
キーホルダーを一目見て好きになっちゃったよ!」
「・・・そう。よかったね。で・・・こんなにたくさんのぬいぐるみどうするの?」
「枕元に飾るの!でね、毎日、スリスリしてから眠るの!」
「こ、こんなにたくさんのぬいぐるみを置かれたら・・・ぼ、僕の寝る場所が・・・」
「あっ、だったらトワくん、ベッドを広げよう!うん!そうしようよ!」
○○が大事そうにぬいぐるみ達を抱え、ぬいぐるみに顔を埋めている。
そんな姿の○○を見ていたトワは、カワイイと思う反面、ぬいぐるみが憎らしく思えてきた。
「○○さん、それは、できないよ?」
「えっ?どうして?」
「だってここは、倉庫でしょ!ベッドを広げたりしちゃったら、食材やその他諸々の物が置けなくなるし・・・」
「・・・じゃ・・・じゃー、この子達・・・」
トワは、少し怒ったフリをして乱暴にぬいぐるみを掴むと倉庫から出て行く。
「ちょっ・・・トワくん!どこ行くの?」
「・・・」
「も、もしかして・・・捨てちゃうの?・・・だったら・・・わ、私もその子達と一緒に捨ててよ!」
「!!!」
○○の涙声と「一緒に捨てて」の言葉を耳にしたトワは、慌てて振り返れば、瞳いっぱいに涙を湛え、スカートをギュッと握り締め、佇む○○の姿。
そこまで・・・と感じたトワは、ぬいぐるみに嫉妬している自分は、バカだと思うが・・・○○の視線が思いが・・・ぬいぐるみへと一直線に注がれているのが耐えられなかった。
「・・・○○さん、そんなにこのぬいぐるみ達が・・・大事なの?・・・そ、その・・・ぼ、僕・・・よりも・・・?」
「えっ?」
真っ赤な顔をしたトワは、ぬいぐるみに嫉妬している姿が恥ずかしくて視線を彷徨わせている。
「・・・っ・・・あ、あの・・・トワくん?も、もちろん、トワくんの方が大事だよ?で、でも・・・」
「・・・本当に?」
「あ、当たり前じゃない!私にとって一番は・・・トワくんなんだから・・・!だから、その捨てないで?ぬいぐるみ」
○○も真っ赤な顔をしながらトワに真っ直ぐな視線を向けている。
「あ、あのね、○○さん、捨てるつもりじゃないから」
「???」
トワの言葉に不思議そうな顔をする○○に「ついてきて」と囁くトワ。
廊下を進み、食堂へ入れば、厨房にいるナギに声を掛けた。
「ナギさん、ちょっといいですか?」
「あ?なんだ?」
「あの、食堂の四隅に小さな棚、作っていいですか?」
「そんなもん作って何に使う?」
「えっと・・・ちょっとした物やぬいぐるみとかを飾りたくて・・・」
怪訝そうな表情でナギがトワの後ろにいる○○へと視線を移せば、涙で瞳が潤み「捨てないで」と必死に訴えてくる雰囲気にナギは、負けてしまった。
「・・・わかった。ついでに引き出し付のラックか何かにしてくれ。予備の調味料入れにするから・・・」
「「ありがとうございます、ナギさん!!」」
二人してナギに頭を下げ、トワが急いで材料を取りに階下へと降りて行った。