頂き物
□待ち遠しい二人
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「ふう・・・」
私は少しだけ汗ばんだ額を手で拭った。
新年を迎えたシリウス号。
大晦日から続く宴は、もはや恒例行事となっている。
私は、次から次へと料理を甲板に運んでいた。
それだけでも大変なのに、厨房にいるナギは料理を作り、酒の用意をし、甲板に運んではまた料理…の繰り返し。
「ナギ、大丈夫?」
「んあぁ」
私の問いに、顔色ひとつ変えず答えるナギ。
それでも心配で、ナギに訊いた。
「少し、休んだら?私、代わるよ?」
「お前に任せたら生焼けを食わせちまうだろ?」
「んもう!ひどーい」
「ぷっ・・・わははっ」
たわいもない会話。
それだけでも私は癒されてしまう。
・・・ナギも同じだったらいいな。
食材を前に真摯に料理と向き合い、包丁を振るうナギ。
今日は一段とカッコイイ・・・
私の目はナギに釘付けになっていた。
一瞬でも目が離せないくらいに。
「おい、あんま、ジロジロ見るな」
「あっ、ごめん。つい・・・」
慌てて目を逸らし、うつむく私。
ドキドキと胸の鼓動がうるさい。
そんな私にナギの指がそっと近づき、ふわっと耳に髪をかけた。
そして耳元で囁く。
「もうちょっとで一段落つく」
「・・・え?」
「あいつらももうそろそろだろ。そしたら・・・な」
「・・・?」
上目遣いにナギを見上げた。
だけど何事もなかったように、ナギは料理を続けている。
夢、だったの?
ううん、違う。
だってナギの顔が真っ赤だもん。
改めてナギの言葉の意味を理解し、私も耳まで熱くなった。
―甲板が静けさを取り戻すまで―
あとどのくらい?
あとどれくらい?
それが待ち遠しいふたり。
end