航海士 シン

□春の訪れ
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シリウス号は、情報収集の為に立ち寄った港町に約1週間の予定で停泊していた。

今回は、めずらしく一人に一部屋ずつ与えられ、港町に着いて早々にリュウガはシンを

連れて情報を得るために娼館へと向かった。

ソウシは、この町で知り合いが開業医をしていると言うので会いに行き、ナギ、ハヤテ、

トワも渋々酒場での聞き込みに行った。

一人、宿に残った○○は与えられた部屋でゴロゴロし、一人、時間を持て余していた。

シンがリュウガに連れられて娼館に行くと際、情報を得るためだと頭では分かっていても

内心嫌で堪らず、シンに「行かないで欲しい」と言える立場では無い事も百も承知だった。

知らない町で一人、置き去りにされた○○は当然のごとく一人で勝手に町を出歩く事も禁止されているため、部屋に篭りきりになり食事もついつい抜かしがちになっていた。

そんなある日、たまたま1階にある酒場へ足を向けた時、一人の老人が声を掛けてきた。

「お譲ちゃん、一人かい?一緒に食事でもどうだい?」

おじいちゃん子だった○○は、二つ返事で了承し同じテーブルに腰を掛けた。

「お譲ちゃん、名前は?」

「○○と言います。」

「○○ちゃんって言うのかい。ヤマト出身かい?私の妻がヤマト出身なんじゃよ。」

「そうなんですか。奥様は?」

「それがのぉ、昨年、他界したんじゃよ。」

「ご、ごめんなさい。」

「いいんじゃよ。○○ちゃん、この町には、いつまで?」

「・・・わかりません・・・」

「この町におる間、家に遊びに来ないかい?もう、梅の季節じゃろ。庭に何本も梅の木が植わっておってな、良かったら見に来ないかい?」

「えっ!梅ですか!ぜひ、お邪魔させて下さい。」

この町に来て以来、いつも一人で寂しい思いをしていた○○は、大好きな梅の花を見たくておじいさんの家に遊びに行くことにした。
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