航海士 シン
□吸い込まれる瞳
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遠ざかる雨雲を見つめているシン。
漸く仕事が一段落し少し苦めのコーヒーを欲した。
操舵室から厨房へと向かう道すがら、凄まじい嵐の後が見受けられ、甲板に打ち上げられた海藻類を海に投げ捨てながら歩く。
他のクルー達は、破損した甲板等を仮修復に精を出している。
厨房の主、ナギに一声掛けたシンが自らコーヒーをドリップし食堂でつかの間の休息を取っていた。
「シンさん、お疲れ様です。」
愛しい彼女の涼やかな声がシンの耳に届き、瞑っていた目を開くとシンを気遣うような表情で見ている○○の顔が見えた。
「どうした?片付けは、終わったのか?」
「はい。これから航海室の掃除に行こうと思って・・・。」
「そうか。なら、一緒に行くか。」
シンが一気にコーヒーを飲み干すとティーカップを手早く洗い戸棚にしまうと航海室へと向かった。
その後ろを○○が小走りで付いていく。
航海室での掃除も終わりを迎える頃、不意に○○が背中に視線を感じ振り返れば
シンが眼鏡を掛け、○○の動きをじっと見つめていた。
「し、シンさん、どうしたんですか?目、どうかしたんですか?」
「目は、なんともないが・・・。」
「だったらなぜ?そ、それに右目・・・」
「眼帯して眼鏡は、おかしいだろ。」
眼鏡越しに見えるシンの色違いの瞳、○○がうっとりと見惚れていた。
「何、見惚れている?そんなに眼鏡がいいか?」
優雅な手つきで眼鏡を押し上げる仕草が色っぽく、シンの瞳に吸い込まれ、
○○は、いつまでも身動きできず、只々見惚れるばかりだった。
ソラマキさま作
soramaki-妄想イラストと日々の生活
end