料理人 ナギ

□寝る前のひと時
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朝の仕込みも終わり、シャワーも終え、ナギがベッドで壁に凭れて座り
新作料理のレシピをノートに取っていた。

真剣な表情でスラスラとペンを走らせているナギに対して
何となく邪魔しちゃ悪いと思い、部屋を出ようとすると
「どこへ行く?」とノートから顔を上げずに聞いてきた。

「いや、あのぅ、邪魔かなって思って・・・」
「邪魔じゃねぇー、こんな時間にウロウロするな。もう少しで書き終わるから
先に寝てろ」
「う、うん。」と頷くとナギの隣に寝転んだ。

「寝れねぇーか?ホットミルクでも飲むか?」
「ううん、大丈夫。ナギがギュッてしてくれたら寝られるから。」
「そうか。」
照れた顔をノートで隠すようにしてサラサラとペンを走らせてるナギの腰に
両腕を回して脇腹に頭を置き、そっと瞳を閉じた。

ナギは、ノートをサイドテーブルに置くとそっと身体をずらし、○○が起きないように
横たわり自分の胸の中に閉じ込めた。

そういや、今日は誰も夜食の催促に来ねぇーなと思いながらたまには、こんな静かな夜を過ごすのも悪くないなと思い、
そっと目を閉じた。

穏やかに過ぎる時間、波が寄せては返す音、心地よい揺れに深い眠りにつきかけた頃、
廊下をバタバタと走る音と共に部屋の扉が開け放たれた。

「真珠ちゃーん、迎えにきた。このロイ様の胸に遠慮なく飛び込んで来い!」
「ロイ、貴様、何しに来た。」

すぐさま鎖鎌を構えたナギが一歩一歩ロイに近づく。

「おい、バンダナ。今日はな、俺と真珠ちゃんが初めてこの船上で会った記念日だ!
邪魔をするな!」
「何が記念日だ!笑わせるな!さっさと出て行きやがれ!」

騒動に気がついたシンが静かに自室のドアを開け、ロイの後頭部に銃口を突きつけた。

「おい、そこの変態。海の藻屑にされたくなかったら、さっさと自分の船に戻れ。」
「出たな、根暗のムッツリスケベ航海士。すぐに銃を向けるな。」

目の前には、ナギ、後ろにはシンと板ばさみとなり、ロイが前にも後ろにも動けない
状況に陥った。

狭い船室では戦えず、万が一戦ったとしても
ベッドで眠っている○○にケガを
させてしまったら、ますますロイの立場が
危うくなる訳でシリウスの船を出入り禁止
にもなってみれば、○○に会えなく
なるのは目に見えている。

ロイは、このまま引き下がっては面白くないのでリカー特製のコショウ爆弾を放った。

室内でコショウが充満し、ロイまでもが
くしゃみと涙が止まらず、涙声のまま
捨てセリフを吐いて去って行った。

「覚えておけよ!今度こそ真珠ちゃんを攫ってやるからな」

ロイが去り、やっと室内のコショウの煙たさが取れて落ち着きを取り戻した。

ナギとシンは、未だベッドの中で
スゥースゥーと気持ち良さそうに眠っている
○○を見つめ、二人同時にため息を吐いた。

「「こいつ、何でこんな状況でも寝れるんだ?」」

二人は、そんな疑問が頭の中でグルグルと
駆け巡った。


end

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