料理人 ナギ

□迷子の子猫ちゃん
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ナギと○○は、買出しの為、市場にやって来ていた。
あいかわらず、どこの街に行っても市場は人でいっぱいである。

「おい、はぐれるなよ。毎回、毎回はぐれるからな。」
「ナギ、大丈夫だよ!」
「いっつも大丈夫って言ってはぐれてるのは、何処のどいつだ」
「うっ、返す言葉もございません。」
「ほらよ」

ナギが○○に手を差し出した。お互い恥ずかしがりながら手を繋いだ。
人ごみを縫うように気になるお店を覗いては、片っ端から買っていった。

少しでも珍しい食べ物が売っていれば、ナギは夢中で物色し始め
気づいた時には、○○と繋いでいた手が離れてしまう事もしばしばあった。
そう言う時に限り、○○が別の店員から呼び止められフラフラとそちらへ
寄っていくのでナギも気づかぬうちに○○とはぐれてしまうのだ。

今日も案の定、ナギと○○はいつの間にか離れ離れになっていた。

「あれ?ナギ?どこ?」
人が行き来している市場にポツンと一人取り残された○○がいくら呼んでも
声がかき消され、ナギの耳には届くことは無かった。

人の往来の真ん中に居てもどうしようもないと思い、ナギを探すべく
市場の端から端へと歩き回っていた。

ナギはナギで○○を探し回っていた。
「だからあれ程、はぐれるなって言ったのに・・・早速、はぐれてやがる」
多数の荷物を持ちながらの人ごみの中は、さすがのナギも疲労してきていた。

街の市場とは言え、何筋かに渡ってたくさんの店が軒を連ねている為
1本筋を違えば、お互いがすれ違いの状況に陥る。
ナギは、市場に踏み込む時にはぐれた時はどの店の前で待つか決めていれば
良かったと後悔し始めていた。


「ナギぃー!どこにいるの?」
半べそ状態の○○が市場内を右往左往している姿を見て取れたシンが
駆け寄ってきた。

「お前、何してんだ?ナギは、どうした?」
「し、シンさぁーん。ナギとナギとはぐれちゃったぁー」
「何やってんだよ!お前は!一緒に来い!ナギと合流するぞ!」
「ナギ、何処にいるか知ってるの?」
「これから探しに行くんだよ!」

シンは、○○の腕を取り人ごみでごった返している市場へと
足を踏み入れた。

シン達が足を踏み入れた通りには、めずらしい香辛料を売っている筋で刺激的な香りが
鼻腔をくすぐる。

○○がキョロキョロと辺りを見回し、ナギを探しているのか物珍しい香辛料を
見ているのか時折、足を止めるとシンから怒られながらノロノロと歩き出した。

「お前なぁー、ナギを探しているんだろ?香辛料に目を奪われてるんじゃねぇよ!
 さっさと歩け!」
「ごめんなさい。シンさん。ついつい、ナギが欲しいだろうなって思うと・・・」
「だから早くナギと会って二人でまた来たらいいだろう」
「そ、そうですね。ナギと合流すのが先決でした。」

香辛料の通りでは、ナギを見つける事が出来ず隣の筋へと足を踏み入れた。



ナギが香辛料の通りに向かった時には、すでに二人は隣の筋へ入った後だった。

(あいつ、どこフラフラしてんだ?まさかヘンな奴に連れ去られた訳じゃねぇーだろうな)

ナギは、込み上げる不安を抑え小走りに通りを駆け抜けていった。

(ここにもいねぇ。どこに居るんだ?手じゃなく腕を組んで歩けばよかったのか?)


広くも狭くもない市場。グルグルと追いかけっこする様に3人は、なかなか合流する事が出来なかった。

行く筋も行ったり来たりとどれぐらいの時間が経っただろうか。
ナギは、一旦、船に戻りリュウガに報告し再度、街に来ようと思い
市場の入り口にやってきた時には、陽が傾きかけていた。

「あっ、ナギ!」
シン達も市場の入り口に戻ってきてみたら丁度、ナギが市場から出て行く後姿が
見え、シンの腕を振り切って○○はナギの元へ駈け寄っていった。

「○○、お前どこにいたんだ?」
「ごめんなさい。」
俯く○○の背後にシンが悠然と姿を現した。

「ナギ、こいつが市場の中を泣きながら歩いていたから俺が保護してやったんだ。
 感謝しろよ」
「悪かった。迷惑かけたな。シン、今夜は食いたいもん作ってやるよ。」
「今夜は、フォアグラだな。明日の朝は、リゾットで許してやるよ。」
「あぁ、分かった。シン、ありがとな。」

一足先に船へと戻ったシンは、ナギを探す名目で○○と半日一緒に居られた事に
密かな喜びを感じていた。



「悪かった。俺がもっと見てりゃはぐれなかったのにな。」
「ううん、ナギのせいじゃないよ。私がもっとナギを見てればはぐれなかったよ。」
「まだ買出しが終わっちゃいねぇからな。明日も買出しだ。」
「ごめんなさい。明日は迷惑かけない様にする。」
「頼んだぜ。」

二人顔を見合わせ、微笑みあいながら船へと戻って行った。

翌日の買出しには、ナギは○○の腰を抱いて密着しながら船を降りていき
その隣で顔を真っ赤にしながら○○もナギの腰に腕を回していた。


end

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