料理人 ナギ
□桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿
1ページ/1ページ
抜けるような青空の下、○○はナギに連れられて梅林公園へと来ていた。
どこからともなく時折、ウグイスの鳴き声も聞こえ、春の訪れを告げている。
白や桃色の花が咲き誇り、○○が梅の花へと顔を近づかせて香りを嗅いでいた。
「おい、そんなに近づかなくてもいいだろう。梅の花食う気か?」
「た、食べるって・・・少しでも梅の花の香りを楽しもうとしただけなのに・・・」
「悪かったよ、そうふて腐れるな。先、行くぞ。」
ナギが歩きかけた時、○○はナギの腕に自分の腕を絡ませれば
「おい、放せ。」
「イヤだ。シリウスのみんなもいないんだから良いでしょ?」
○○が強引にナギの腕を取り、先へと歩みを進めた。
「本当にキレイね、梅林を見るなんて何年ぶりだろう。ナギ、連れてきてくれてありがとう。」
「おぉ。ヤマトでも梅林見に行ってたのか?」
「うん、お弁当持って行ったよ。梅の後は、桜も見に行ったな。」
「そうか・・・いつかヤマトで梅も桜も一緒に見ような。」
「うん、絶対だからね。約束だよ。」
二人がお弁当を食べようと公園の中ほどまで来てみれば、手入れの行き届いた芝生があり
そこにお弁当を広げて酒を片手に梅の花を愛でている人達がチラホラ見える。
ナギと○○も空いているスペースに敷物を敷くとお弁当を広げた。
「うゎー、おいしそう!!ナギ、ありがとう。」
「おいしそうじゃなくておいしいんだ!」
「あはは、そうだね。」
「お前も飲むか?梅酒、持ってきた。」
「いいの?飲んで?」
「あぁ、そのかわり1杯だけな。」
「ありがとう。」
二人で梅酒を飲みながらナギ特製のお弁当を食べ、梅の花たちに囲まれ静かに時間が過ぎ
ていった。
そろそろシリウスに戻ろうかと公園の出口に向かいながら歩いていると不意に○○が「桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿」と呟いていた。
「何んだよ、それ?」
「ヤマトの諺だよ。桜の枝は、切らない方がよくて梅の枝は、きちんと切らないといけない。」
「へぇ。」
「伸びるままに咲かせた桜は、華麗に花を付け、手入れの行き届いた梅は見事な花実を付ける。それを知らないのは馬鹿だ。って言う意味。」
「ふーん、お前だったら何も考えずに無闇矢鱈に切りそうだな。」
「ナギ!何でそんな事言うのよぉー!」
アハハと笑いながら梅林公園を走り回る二人に真っ赤な夕日が照らしていた。
END