料理人 ナギ

□試食に感謝
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久々の暴風雨に晒されているシリウス号は、雨のせいで掃除や洗濯等、外で出来る仕事ができないのでハヤテ、トワ、○○が食堂で駄弁っていた。

隣の厨房では、ナギが色々と料理の試作品を作っており、美味しそうな匂いが食堂にまで広がった。

「ナギさん、料理の試作かな?試食させてくれないかなぁ。」

「あっ、○○だけずりぃぞ!俺も試食してぇ。」

「僕も食べたいですよぉ!」

キャーキャーと騒ぐ3人に厨房からナギが顔を出し

「うるせぇ!暇だったら手伝え!」

「はーい!!」

元気よく返事した○○が厨房へ走って行き、ハヤテとトワは、あいかわらず駄弁っている。


ナギの手伝いをするために厨房に入った○○の目が大きく見開いた。

厨房のカウンターには、試作品が所狭しと並んでおり、もうすでに手伝う事も無い状態だった。

「な、ナギさん、これ・・・。」

「見れば分かるだろ。試作品だ。食って感想を聞かせてくれ。」

「じゃー、まだ、食堂に・・・」

「いや、お前だけにしか食わすつもりはねぇから。」

「え、いいんですか?ナギさん、ありがとうございます。え、遠慮なく頂きます!」

「おぅ。」

一口、パクッと頬張るとチーズの香りがフワーっと広がった。

「ナギさん、うん、おいしいです!チーズの香りと甘みが広がってあっさりしていていくらでも食べられますね。」

「おぅ、そうか。じゃ、次の宴に出せるな。次は、これ、食ってみろ。」

ナギが差し出した器に手を伸ばし、再び、パクっと一口、頬張れば、今度は、なつかしい味がした。

「ナギさん、これ、ヤマト料理の味付けに似ていますね。なんだかなつかしいです。」

「ヤマトの肉じゃがをベースにちょっと手を加えただけだからな。」

「これも宴で食べられるんですね。楽しみです。」

「いや・・・これは・・・宴には、出さねぇ。」

小首傾げ「えっ?」と言う表情をした○○にナギは、ソッポを向きながら

「お、お前のためだけに作った料理だ。だ、だから宴には、出さない。」

ナギの言葉に真っ赤になった○○が恥かしげに目を伏せ、ナギの両手を握って礼を述べた。

「ナギさん、ありがとうございます。すごく、すごく嬉しいです。」

「まだまだ、試作品があんだ。早く、食え。」

ナギまでもが耳まで真っ赤になった顔を隠す為に次から次へと料理を○○に差し出した。

○○が順に試食していき、ナギに的確な感想を述べていった。

ナギは、○○の耳に届くか届かないかぐらいの小声で「やっぱ、試食は、○○に限るな。」と呟いた。

「えっ、ナギさん、何か言いました?」

「いや、何でもねぇ」

(ハヤテやトワに食わしても“うめぇ”しか言わねぇからな。)

ナギが内心、独りごちた。
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